研修会社がeラーニングビジネスを始める場合のビジネスモデル3つのパターン

昨今、研修会社や資格試験実施団体などにおいて、集合研修やオンラインライブセミナーで利用した教材を有効活用してeラーニング講座として再構成した上で販売し、新しい収益源にするビジネスモデルへの関心が高まっています。

eラーニングコンテンツ販売やオンライン講座販売を検討している研修会社にとって、どのようなビジネスモデルを選択すると新規事業をうまく立ち上げることができるか、悩んでおられる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、研修会社が「eラーニングで新規ビジネスを始めよう」としたときに、「考えられるビジネスモデル」を3つパターンに分けて、特徴やメリット・デメリットを解説します。

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なお、新規事業としてビジネスを始める際の考え方については、「研修会社が新規事業としてeラーニングビジネスに取り組むために必要な考え方」をご覧ください。

目次

eラーニングのビジネスモデル 3つのパターン

パターン1:二毛作モデル

二毛作とは、同じ土地で異なる時期に2種類の作物を栽培する農業の方法を指します。この考え方を応用した「二毛作モデル」とは、1つのプロダクトを複数の異なるサービスの形で提供し、互いの相乗効果や収益の最大化を目指すビジネスモデルです。

このモデルを研修に当てはめると、集合研修やオンラインセミナーを実施した後に、その内容を元にオンデマンド型のeラーニングコンテンツも作成して提供するのが、二毛作モデルです。

具体的には、以下のようなケースがあります。

  • 集合研修の様子をカメラで撮影し、不要な部分(休憩時間やグループワークを実施している部分など)を編集でカットしてeラーニングコンテンツ動画として利用する。
  • 集合研修やオンライン研修で使用した研修テキストのPowerPointファイルにナレーションの音声を付けて動画にし、eラーニングコンテンツとして利用する。
  • Zoomなどで実施したオンラインライブ研修の録画動画をeラーニングコンテンツ動画として利用する。

この二毛作モデルのメリット、デメリットをまとめると、以下のようになります。

メリット

  • 初期投資が少ない
    既存の集合研修資料などの資産を転用してeラーニング講座を制作するため、大きな初期コストをかけずにスタート可能。
  • スピーディーな展開が可能
    eラーニングコンテンツ制作時間が短縮化できるため、迅速に受講が開始可能。
  • 受講者にとってもメリット:
    集合研修やオンラインセミナーを欠席したり、分かりづらかったところを復習したい受講者が、後から見返すことができる。

デメリット

  • 収益性が限定的
    多くの場合、欠席者用・復習用としてeラーニングコンテンツを提供しても、それに対して追加料金を得るのが難しいので注意が必要。

パターン2:売り切りモデル

一般的に「売り切り」とは、商品やサービスを一度購入してもらえば取引が完了する販売方式を指します。たとえば、食料品や書籍などは一度購入すれば、その後に継続的な支払いは発生しません。このビジネスモデルが該当します。

この「売り切りモデル」をeラーニング研修事業に適用する場合、自社の得意分野の教材コンテンツを制作し、それを一回払いで販売する方法を指します。このビジネスモデルでは、質の高いeラーニングコンテンツを提供し、一回の購入で価値を感じてもらうことが重要です。コンテンツは購入者が自由に利用できるため、特定のテーマやニーズに合った内容を明確に打ち出すことが成功の鍵となります。

主な特徴は下記のとおりです。

  • 特定のテーマのeラーニングコンテンツを制作し、単品で販売を行うモデル(たとえば、ビジネススキル、リーダーシップ、コミュニケーション、または最近注目されているAIやDX関連のコンテンツなどです。)
  • 3ヶ月間の受講で1人10,000円のように受講期間を区切って、「売り切り」 でeラーニング研修を提供する
  • ただし、受講期間が終わると顧客が去っていってしまうのを止めにくい

この売り切りモデルのメリット、デメリットをまとめると、以下のようになります。

メリット

  • 顧客ニーズに応えやすい
    特定のテーマやスキルに特化した学習コンテンツを提供するため、受講者の満足度が向上
  • 短期的な収益を確保
    eラーニング講座の販売期間を設定することで、短期間での売上計画が立てやすい

デメリット

  • 顧客の離脱リスク
    eラーニングの受講期間が終了すると、顧客がサービスを離れる可能性が高く、継続して利用してもらうためには別のサービスを提案する必要がある
  • コンテンツ制作の負担
    定期的に新しいeラーニングコンテンツを制作して顧客に提案し続ける必要がある

パターン3:サブスク(サブスクリプション)モデル

一般的にサブスク(サブスクリプション)モデルとは、商品やサービスを月額の定額料金で提供し、利用者が継続的に利用できるビジネスモデルを指します。このモデルでは、一度契約すれば、解約するまではサービスを自由に利用できます。

eラーニングにおける「サブスクモデル」は、月額定額料金で学習コンテンツを受け放題とする形式です。利用者は自分のペースで学習を進められ、幅広いテーマのコンテンツを受講できるため、学習の自由度が高まります。一方で、研修会社など提供者にとっては、継続課金による安定した収益基盤を構築できるビジネスモデルです。

学習者にとっては、サブスク契約をしている間は、いつでもどこでもeラーニング講座を自分で選んで好きなだけ受講できるメリットがあります。

下記が主な特徴です。

  • eラーニングコンテンツを数十~数百本用意し、受け放題・月額定額料金で提供するサブスクモデル
  • サブスク継続利用のユーザ数が積み上がってくると、毎月確実に売上が見込める
  • 顧客を逃がさないためには、継続的に新しいeラーニングコンテンツを作って提供し続ける必要がある

このサブスクモデルのメリット、デメリットをまとめると、以下のようになります。

メリット

  • 安定した収益
    サービス提供はハードルが高いものの、サブスク契約によってユーザが継続的にeラーニングサービスを利用することで、安定的で継続した収益が見込める
  • 顧客基盤の拡大
    多くの学習コンテンツを提供することで、幅広いターゲット層を獲得可能

デメリット

  • 初期投資が大きい
    初期段階で十分なコンテンツを用意するための制作費用やeラーニングシステムなどの構築費用が高額になる
  • 継続的なコンテンツ作成が必要
    顧客とのサブスク契約を維持するために、新しいコンテンツの定期的な追加が必要で、コストと人材確保が不可欠
  • サブスクリプション特有の契約自動更新機能も必
    たとえば、eラーニング受講料の目安を月額2,000円~3,000円とし、契約が続く限りコンテンツを受講できる状態を維持します。

このビジネスモデルでは「法人・個人両方の利用を想定した決済機能」が好ましいとされています。決済機能は特に複雑で、法人向けにはクレジットカードや請求書払い、個人向けにはコンビニ決済や携帯キャリア決済が求められる場合もあります。また、サブスクリプション特有の契約自動更新機能も必要になります。

決済機能などを自前で開発するのは現実的ではありません。eラーニングシステム・学習管理システムと呼ばれるLMSに決済機能などが搭載された、LMSを利用することになります。LMSはクラウド型のものを選ぶことによって、初期投資を抑えることができます。

eラーニング ビジネスモデルの使い分け

以下の図は、eラーニングビジネスの3つのモデルの、投資金額、リスク、リターンの大小を示したものです。二毛作モデルが、投資金額・リスク・リターンのいずれも小さく、手軽に始めることができるビジネスモデルです。逆に、サブスクモデルが投資金額もリスクも大きい代わりに大きなリターンも見込めるビジネスモデルです。

一般的には、二毛作モデルでeラーニングビジネスを立ち上げ、徐々に投資金額を増やして売り切りモデルやサブスクモデルに移行していくと、無理なくビジネスを拡大していくことが可能です。

それぞれの特徴を理解し、自社に最適なビジネスモデルを選択することが重要です。

実現するために必要なeラーニングシステム(LMS)とコストの考え方

ここまで説明してきたビジネスモデルのいずれかを使ってeラーニングビジネスを立ち上げるためには、当然ながらeラーニングシステム(LMS、学習管理システム)を利用する必要があります。LMSを導入して利用していくのに掛かるコストについても触れておきます。

LMSのコストには、大きく分けると以下の4種類があります。

  • 初期費用
  • 月額基本料
  • 受講者1人あたりの利用料
  • 決済手数料

LMSによって金額は異なりますが、一般的には、初期費用は0円から10万円程度の範囲、月額基本料は0円から20万円程度と幅があります。また、月額基本料と受講者単位の利用料はトレードオフの関係になることが多く、月額基本料が高いLMSは受講者あたりの利用料が安く、月額基本料が安いと受講者あたり利用料が高めに設定されるのが一般的です。そのため、これらをセットで検討することが重要です。

さらに、eラーニングコンテンツの販売を行う場合は、決済方法に応じた販売手数料が掛かります。これは厳密にはLMSベンダーに対して支払う費用ではなく、各決済方法を提供している会社に対して支払う手数料です。

例えば、クレジットカードの決済手数料は教材価格の2%から5%程度です。コンビニ決済は2%~10%、。携帯電話料金と合わせて引き落とされるキャリア決済は手数料が高く、10%以上の手数料が掛かるのが一般的です。

決済方法を複数用意できると、eラーニングコンテンツを購入する受講者にとっては便利にはなりますが、販売を行う側の利益はその分減ることになります。そのため、どの決済方法を利用するかを慎重に判断する必要があります。

紹介した3つのビジネスモデルごとにLMSのコストへの影響が異なります。

たとえば、二毛作のビジネスモデルでは、個々の顧客向けに研修を実施した際に、それに合わせてeラーニングコンテンツを提供します。LMSの利用方法としては、顧客の数だけLMSの環境を準備する必要があり、かつ、それぞれの利用期間は短期間である、という特徴があります。そのため、月々の利用費用よりも環境を準備する際の初期費用のコストインパクトが大きいことになり、初期費用の安いLMSを選ぶのがポイントとなります。

売り切りモデルの場合は、3ヶ月間受講できて10,000円のように、顧客からいただく料金の上限が決まっている中で、LMSの利用費用を捻出して利益を確保することになります。そのため、LMSの月額基本料と受講者ごとの利用費用を抑えることがポイントとなります。

一方、サブスクのビジネスモデルでは、毎月定額の料金を支払ってもらい長くサービスを利用してもらいます。つまり、決済が毎月発生しますので、決済手数料負担が意外とバカになりません。

例えば、月額料金2,000円を毎月クレジットカードで決済して利用するユーザの場合、クレジットカードの決済手数料率が1%違うと、毎月20円ずつ利益が変わってくることになります。決済手数料までしっかりと比較することがポイントとなります。

LMSの選定にあたっては「LMSの選定方法(機能比較リスト付) ~機能比較で失敗しないために~」もご覧ください。

まとめ

eラーニングビジネスのビジネスモデルには、大きく分けると、「二毛作モデル」「売り切りモデル」「サブスクモデル」の3つがあります。

それぞれのビジネスモデルの投資負担やリスク、リターンを考えると、まず「二毛作モデル」で市場の反応を確認し、需要に応じて「売り切りモデル」や「サブスクモデル」に移行する段階的なアプローチを採ることが望ましいと考えます。自社のビジネスモデルがどのフェーズにあるかによって、LMSに求める機能も変わってきます。自社に合ったクラウド型の学習管理システム(LMS)を選択することで、効率的なeラーニングコンテンツ販売を実現できます。

最終的には、顧客満足度を高めると同時に、自社の成長を持続的に促進するビジネスモデルを確立することが目標です。当記事を参考にして、自社に最適なビジネスモデルのパターン見極めましょう。

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研修会社が新規事業としてeラーニングビジネスに取り組むために必要な考え方

本記事では、新規ビジネスとしてeラーニングビジネスに取り組む際に押さえておくべき要点、基本的な業務フロー、そしてシステムに求められる基本機能について解説します。

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