少子高齢化と人材流動化の影響により、「今いる人材をどう活かすか」が企業経営の重要なテーマとなっています。なかでも非正規雇用者の戦力化と定着を図る施策として、厚生労働省の「キャリアアップ助成金」は高い注目を集めています。
本記事では、厚生労働省が実施する「キャリアアップ助成金」について、令和8年度(2026年度)の最新情報をもとに、制度の全体像と6つのコース、申請手順をわかりやすく解説します。
参照元:キャリアアップ助成金|厚生労働省
キャリアアップ助成金とは?
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用の労働者が、企業内でキャリアをアップさせるための支援制度です。非正規雇用の労働者を正社員に転換したり、処遇改善の取組を実施したりした事業主に対して、厚生労働省が助成金を支給します。
キャリアアップ助成金には以下の6つのコースが用意されています。
| 正社員化支援 | 正社員化コース |
| 障害者正社員化コース | |
| 処遇改善支援 | 賃金規定等改定コース |
| 賃金規定等共通化コース | |
| 賞与・退職金制度導入コース | |
| 短時間労働者労働時間延長支援コース |
6つのコースの概要は以下の通りです。
| 【正社員化コース】 | 有期雇用労働者等を正社員化した場合:1人当たり40万円(重点支援対象者は80万円)※無期雇用からの転換は半額 |
| 【障害者正社員化コース】 | 障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換した場合:1人当たり最大120万円(重度障害者等を有期から正規に転換した場合) |
| 【賃金規定等改定コース】 | 有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し適用した場合:1人当たり4万円~7万円(改定率に応じて変動) |
| 【賃金規定等共通化コース】 | 正規雇用労働者と共通の賃金規定等を新たに規定・適用した場合:1事業所当たり60万円 |
| 【賞与・退職金制度導入コース】 | 賞与・退職金制度を導入し支給または積立を実施した場合:1事業所当たり40万円(同時導入で16.8万円加算) |
| 【短時間労働者労働時間延長支援コース】 | 短時間労働者の週所定労働時間の延長等を行った場合:1人当たり最大50万円(小規模企業・1年目に5時間以上延長した場合。2年目の取組への助成もあり) |
このうち、従業員一人あたりの助成額が大きく、対象者の人数も多くなるのは正社員化コースかと思います。そのため本稿では正社員化コースについて解説します。
正社員化コースとは?
上記のうちの「正社員化コース」は、有期雇用労働者等を正社員化した時に、事業者に助成金が支払われるものです。正社員化コースの受給額の詳細、人材開発支援助成金との併用で受給額を倍にするスキーム、よくある質問は、以下の記事で詳しく解説しています。

支給額
支給額は2025年度から大きく変更になり、新たに「重点支援対象者」という区分ができました。この重点支援対象者を正社員化した場合は、制度変更前と同水準の80万円(中小企業の場合。大企業は60万円)が助成されますが、対象者以外を正社員化した場合の助成額は40万円(中小企業の場合。大企業は30万円)です。令和8年度(2026年度)もこの枠組みが継続しています。

また、令和8年4月8日からは「情報公表加算」が新設されました。正規雇用労働者への転換等に係る所定の情報を、自社が管理するウェブサイトまたは厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」に公表した場合、1事業所当たり20万円(大企業は15万円)が1回に限り加算されます(出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年4月8日)」)。
重点支援対象者とは
重点支援対象者とは、次のa~cのいずれかに該当する人を指します。
a:雇入れから3年以上の有期雇用労働者
b:雇入れから3年未満で、次の①②いずれにも該当する有期雇用労働者
①過去5年間に正規雇用労働者であった期間が合計1年以下
②過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない
c:派遣労働者、母子家庭の母等または父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者
これを読むと、昨年度までのように有期雇用の労働者を正社員化すれば助成するという考え方から、正社員化がより困難な労働者を重点支援対象と定め、これらの人たち、つまり、重点支援対象者への助成を手厚くするという考え方に変わったことが分かります。
その重点支援対象者としては、前述の通りa~cが定義されていますが、その中で、本人の過去の雇用状況や家庭状況などとは無関係に重点支援対象に該当させることができるのが、cの「人材開発支援助成金の特定の訓練修了者」です。
人材開発支援助成金には7つのコースがありますが(2026年4月現在)、キャリアアップ助成金の重点支援対象者cに該当するのは、そのうちの3つのコースだけとなっています。
①人材育成支援コース
②事業展開等リスキリング支援コース
③人への投資促進コース
さらに、これらの各コースの中では、研修の実施方法によって助成額・助成率に違いがありますので、詳細は厚労省のサイトでご確認ください。

参照元:キャリアアップ助成金|厚生労働省
ここまでご説明したように、令和7年度からは、重点支援対象者とそうではない従業員という区分が設けられ、重点支援対象者はa~cの3つの類型で定義されています。そのため、重点支援対象者に該当するかどうかを確認・証明する必要が出てくることになり、キャリアアップ助成金の申請手続きがこれまで以上に煩雑になることが予想されます。ですので、申請にあたっては社労士等の専門家の力を借りるのが近道ではないかと思います。重点支援対象者の該当要件や確認方法のより詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。

キャリアアップ助成金の申請手順
キャリアアップ助成金の申請手順は、以下の通りです。

- キャリアアップ計画の届け出
助成金を申請する準備として、正社員化の取組を実施する前日までに「キャリアアップ計画」を管轄の労働局に提出します。令和7年4月の改定により、従来の事前認定制から届出制に簡素化されましたが、取組実施日の前日までに提出が必要な点は変わりません。 - 就業規則等の改定と実施
正社員化規定がない場合、就業規則等に正社員転換制度を規定することが必要です。 - 正社員化
その規定に基づいて、正社員への転換を実施します。 - 給与の支給
正社員として6か月分の給与を支給します。このとき、正社員転換前の6か月と比較して3%以上の賃金増額が必要です。 - 支給申請手続き
正社員への転換後6か月間の給与支給日から2か月以内に、支給申請手続きを行います。申請は窓口への持参の他、郵送や電子申請によって行うことができます。
助成金を活用するメリット
非正規雇用の労働者に対する支援を行うことにより、優秀な人材を確保でき、企業の競争力強化につながります。非正規雇用者の処遇改善に取り組む姿勢は、企業イメージを向上させ、社会の信頼を得ることで新たなビジネスチャンスを生む可能性もあります。
助成金は「人材投資のきっかけ」に過ぎません。正社員化を通じて、企業の組織力と人材定着力を高めていくことが、制度の本質です。
制度を上手に活用し、「今いる人材」を「未来の戦力」へと変えていきましょう。
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