★★★人材開発支援助成金は、令和7(2025)年4月から要件が一部改訂になりましたので、2025年3月以前に書かれた古いウェブの記事を鵜呑みにされないようご注意ください!
必ず厚生労働省のサイトで最新情報をご確認ください!
厚生労働省が研修受講費用の最大75%を助成する「人材開発支援助成金」を活用し、eラーニング研修ビジネスを新規事業として立ち上げる企業が増加しています。
本記事では、研修事業を提供されている、もしくは、提供を計画されている企業の方々を対象として、「人材開発支援助成金」の4つのコースのうちの「事業展開等リスキリング支援コース」に対応したeラーニング研修ビジネスを立ち上げる方法を、具体的に解説します。
研修受講費用の最大75%が戻ってくる
「 人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース」の概要
厚生労働省が実施する「人材開発支援助成金」は、企業が従業員に対して職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。(詳細は、厚生労働省の「人材開発支援助成金」ウェブサイトを必ずご確認ください)
人材開発支援助成金には以下の4つのコースがあります。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
この4つのコースの中でeラーニングでの提供が最もしやすいのが、④の「事業展開等リスキリング支援コース」です。

他の3つのコースは、
①人材育成支援コース: 経費助成率が45%~と下がる
②教育訓練休暇等付与コース: 教育訓練のために休暇を取るもので、実施の難易度がアップする
③人への投資促進コース: 高度デジタル人材の育成や大学院への進学などが要件で、実施の難易度が高い
という要件・特徴があり、比較してみると④の事業展開等リスキリングコースが、eラーニング研修を提供するという観点では最も取り組みやすいものとなっています。
「事業展開等リスキリング支援コース」に対応した研修をeラーニング研修の形で提供する場合には、
- 10時間以上の長さの動画eラーニング研修を提供する
- 受講者がeラーニング研修動画を10時間以上受講する
- 受講した履歴がLMSに正しく記録される
- 受講企業側で、研修受講の事前と事後に労働局に対して申請を行い認められる
という条件を満たすと、受講企業に対して研修費用の最大75%(中小企業の場合)の経費助成があります。
例えば、受講費用30万円のeラーニング研修を10名が受講した場合、
- 研修提供側の売上: 30万円×10人=300万円
- 助成額: 300万円×75%=225万円
- 研修受講側の負担: 300万円-225万円=75万円(1人あたり7.5万円)
となり、研修提供側は売上をしっかりと確保しつつ、受講側は負担を抑えることができるため、研修提供側・受講側の双方にメリットがある制度です。
※注
事業展開等リスキリングコースの助成金には、賃金助成額=研修受講時間1時間あたり1,000円の助成金も設定されていますが、eラーニング研修には適用されません。eラーニング研修に適用されるのは上述の最大75%の経費助成のみとなっています。
いろいろなブログ等で、「人材開発支援助成金で最大90%助成される」などと書かれていることがあるのは、経費助成と賃金助成の両方が適用される対面での研修の場合を指しています。eラーニングの場合は当てはまらないことにご注意ください。
日本政府が推進する「リスキリング」の背景と戦略
日本では、急速なグローバル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)化の進展に伴い、企業が新しい事業モデルへ転換することが求められています。こうした変化に柔軟に対応できる人材を育成するため、「リスキリング(職業能力の再開発)」が国家戦略として明確に位置づけられています。
2022年には、政府が5年間で1兆円をリスキリング支援に投じる方針を発表しました。また2023年度からは、人的資本経営の一環として、大企業に対して「人的資本に関する情報開示」が義務づけられました。これにより、従業員教育やスキル形成への投資が、企業の中長期的な経営課題として改めて認識されるようになっています。
人的情報開示の内容は、義務化の項目とは別に2022年8月に内閣府が「人的資本可視化指針」を発表しています。また、経済産業省の報告によれば、大半の企業が「人材不足」を感じており、課題解決手段としてリスキリングを挙げる企業が増加しています。
参照文献:
・経済産業省「未来人材ビジョン」報告書
・経済産業省 「イノベーション創出のための 学びと社会連携推進に関する研究会 報告書(概要版)」
理解を深めるリスキリングの参考記事:
・リスキリングへの対応は? ~積極的な企業は26.1% 帝国データバンク全国調査(Qualif eラーニングラボ)
「事業展開等リスキリング支援コース」の詳細
人材開発支援助成金の4つのコースのうちの1つである「事業展開等リスキリング支援コース」では、基本要件が3つ定められています。
- OFF-JTにより実施される訓練であること
- 実訓練時間数が10時間以上であること
- 次の①または②のいずれかに当てはまる訓練であること
①事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
②事業展開は行わないが、事業主において企業内のデジタル・デジタルトランスフォーメーション(DX)化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める場合にこれに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
これらを詳しく見ていきましょう。
1.OFF-JTにより実施される訓練であること
これは改めての説明は不要かと思いますが、「OFF-JT」つまり業務とは離れた「研修」として実施する必要があります。人材開発支援助成金の別のコースでは「OJT」(=On-the-Job Training)に対する助成もありますが、研修事業を提供する皆様の立場からすると、顧客企業の中に入り込んで行う必要があるOJTよりも、外側から研修を提供することができるOFF-JTの方が実施しやすいのは明らかだと思います。
また、OFF-JTの実施方法としては、以下の5つが定義されています。
- 通学制
- 同時双方向型の通信訓練
- eラーニング
- 通信制
- 定額制サービスによる訓練
対面で行う集合研修や、Zoom等を使ってのオンラインライブ型の研修も認められているのですが、研修講師の登壇の負担やスケジュール調整の手間・コストなどを考えると、オンデマンド型のeラーニングでの提供が最も費用対効果が高いと考えられます。そのため、本記事でもeラーニングでの研修の提供に絞って説明します。
2.実訓練時間が10時間以上であること
これも文字通りに理解すれば大丈夫です。eラーニングで研修を提供する場合には、10時間以上の長さの動画教材を制作して提供する必要があります。動画は1ファイルである必要はなく、30分の動画×20本でも、15分の動画×40本でも大丈夫です。
この際に、10時間ぴったりの分量のeラーニング動画教材を提供したのでは、受講が完了しなかった章が1つでもあると助成金の要件を満たせないことになってしまうため、余裕を見て12~13時間程度のボリュームのeラーニング動画教材を作成して提供するのがよいでしょう。
また、受講者が10時間以上受講したことを証明するために、LMSで一人ひとりの受講時間・受講履歴を記録し、その記録を提出する必要があります。つまり、そのような機能を持ったLMSを選定し、そのLMSを利用してeラーニング教材動画の配信を行うことも必要な要件に含まれることになります。
なお、一般的にeラーニング研修を提供する際には、学習の成果を確認するための確認テストを実施することが多いと思いますが、本助成金においては確認テストの受験時間は訓練時間10時間にはカウントされません。仮に100問の確認テストを2時間かけて解き、その時間がLMSに記録されていたとしても、実訓練時間としては認められません。あくまでも動画を視聴した時間だけであることにご留意ください。
3.次の①または②のいずれかに当てはまる訓練であること
この項目で、どのような内容のeラーニング研修を提供するかの選択肢が出てきます。わかりやすく書くと以下の3つの選択肢が挙げられています。
①新規事業展開に必要な知識・スキルの習得
②-1 DXに関する知識・スキルの習得
②-2 GXに関する知識・スキルの習得
この中で、皆さまの多くにとって研修の提供がしやすいのは、②-1の「DX研修」ではないかと思います。DXの定義がある程度広いため1つの汎用的な研修教材でより多くの受講企業をカバーできるであろうということと、皆さま自身も様々にDXに取り組んでいらっしゃるであろうため、研修教材を開発しやすいであろうことがその理由です。
①は、研修受講企業が取り組もうとしている新規事業に合わせて研修をカスタマイズして開発・提供する必要があるため手間が掛かる、②-2のGXは、工場などに勤務される方に向けた教材は作りやすいものの、研修受講者の大半を占めるであろうオフィスワーカー向けの研修教材が作りづらい、10時間以上もの動画を作るだけの材料を揃えるのが難しい、といったような理由から、すでにこれらの領域のノウハウを十分にお持ちの方々以外にとっては取り組みづらいのではないかと考えます。
つまりまとめると、
「人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースに対応した、DXについて学ぶためのeラーニング研修動画を、13時間分制作して提供する」のが最もオススメ、ということになります。
助成金対応のLMS(eラーニング研修動画の配信システム)の選び方
DXのeラーニング研修を提供する場合、動画ファイルを受講者に渡して視聴してもらうのでは要件を満たすことはできず、受講者が10時間以上研修を受講したかどうかを記録できるLMS(Learning Management System:学習管理システム)に載せた形で提供をする必要があります。
事業展開等リスキリング支援コースの詳細版パンフレットの中には、eラーニング研修の要件として「LMS」という言葉が5ヶ所登場します。それらをまとめると、本助成金に対応するLMSの要件は以下のようになります。
- 10時間以上のeラーニング動画を登録できること
- 登録された動画の長さが合計10時間以上であることが分かる必要がある
- 確認テストの受験時間はカウントされないため考慮しなくてよい
- 受講期間を1ヶ月以上に設定できること
- 受講開始日から1ヶ月間(31日)以上受講できる必要がある
- 受講者ごとの訓練修了日が分かること
- eラーニングを受講完了した日が記録されている必要がある
- 複数の動画がある場合は、動画ごとに完了日が記録される必要がある
- 受講者ごとの訓練の進捗率または進捗状況が分かること
- 受講が完了したことが分かることが重要
- すべての動画について、受講完了していることが記録される必要がある
- 受講時間(=動画視聴時間)が記録されている必要もある
- 受講者ごとに修了証が発行されること
- eラーニングが受講完了になると修了証が発行され、それをダウンロードして提出することができる必要がある
- 受講完了しなければ修了証が発行されないシステムであることが重要
これらの機能を持ったLMSを選定することと合わせて、LMSを提供しているベンダーが本助成金に関して十分な知見や実績があるかも確認することが重要です。受講者から助成金の申請に関して質問があった際に、助成金の趣旨に沿った回答や対応ができないと、結果的に助成金が認められないことにもなりかねないからです。
弊社のLMSである「Qualif」Qualif(クオリフ) | オンライン学習講座販売プラットフォームは、助成金の機能要件を満たしているとともに、Qualifを使って本助成金対応eラーニングを実施いただいている事例を元に、事前事後の申請に関するアドバイスを差し上げることも可能です。
助成金に対応したeラーニング研修ビジネス立ち上げの流れをステップで解説
人材開発支援助成金・事業展開等リスキリング支援コースに対応した、DXに関する知識を習得するためのeラーニング研修事業・eラーニング研修ビジネスを立ち上げるには、以下の5つのステップで進めていくことになります。
ステップ1:eラーニング研修の企画・構成を考える
10時間以上のDXに関するeラーニングの企画を行い、研修の構成や目次を考えます。
前の項で、DXに関する研修は作りやすいだろうと書きましたが、逆に言うとそれ故に世の中に一般的/汎用的な内容を学習するDXのeラーニングコンテンツがすでに溢れているのも事実です。
受講する研修を探している企業の立場に立って考えると、一般的な内容のDXのeラーニングであれば、ITのプロの会社から買いたいと考えるはずです。マイクロソフトやグーグルや、システム開発の大手企業、IT研修の大手企業などの名前を思い浮かべるはずです。
そのハードルを越えて、顧客がわざわざ御社からDXのeラーニングを買いたいと思ってもらえるようにするためには、御社自身のビジネス上の強みに立脚した、御社ならではの、御社オリジナルのDX研修を提供することが重要ではないかと考えます。
・医療 × DX
・介護 × DX
・金融 × DX
・小売 × DX
・飲食 × DX
・営業 × DX
・法務 × DX
・システム開発 × DX etc.
などのように、自社が詳しい業界や業種、業務におけるDXの活用という観点での内容を盛り込んで、
・一般的なDXに関する内容 ・・・ 50~70%
・特定の業界・業種・業務でのDX活用に関する内容 ・・・30~50%
というような構成にしたeラーニング研修を作ることができると、他のベンダーの提供する研修との差別化を図ることができ、結果としてより多くの受講者を集めることができるのではないかと思います。
ステップ2:eラーニングの原稿(PowerPointスライド&ナレーション原稿)を作成する
eラーニング研修動画を作るためには、画面に表示するPowerPointのスライドや、ナレーションで読み上げる原稿が必要となります。
研修の企画・構成を自社でしっかりと固めることができていれば、これらの原稿自体は必ずしも内製する必要はなく、適宜外部のプロの力を借りるなどしてスピード感重視で進めていくのが良いでしょう。
(後述するように、本助成事業の実施期間が限られているため、早く事業を開始することを重視すべきと考えます)
ステップ3:eラーニングの動画を制作する
PowerPointスライドとナレーション原稿をオーサリング(=スライドとナレーションが同期して動くようにすること)して、動画ファイルとして完成させます。
動画を作成するにはいくつかの方法があります。自社で内製して制作する場合は、「eラーニングコンテンツの作成を内製化!継続的にできる4つの方法」の記事を参考にして取り組んでみてください。
ここもスピード重視で外部のプロに依頼するのも有効だと思いますので、費用対効果を考えながらどのように制作を進めるのかの方針を検討してください。
ステップ4:LMSの選定
本助成金におけるLMSの要件は前の方で詳しく説明をしていますので、ここでは詳細は割愛します。前述した、助成金の機能要件を満たしたLMSを選定し、受講したのに受講履歴が取れていたかったというようなことが起こらないようにします。
システムの機能だけではなく、本助成金についての実績が豊富なベンダーを選ぶことも重要です。
ステップ5:LMSでの配信設定・テスト
選定したLMSにeラーニング動画を載せて、配信の設定を行います。実際に動画を配信してみて、きちんと動画が再生されるかや、助成金の申請をクリアできるだけの受講履歴の記録などができていることをあらかじめしっかりと確認しておきます。
eラーニング研修ビジネス立ち上げのスケジュール感
これら5つのステップで準備を進めていく場合の全体のスケジュール感としては、最短で以下のように4ヶ月間ほどの準備期間が必要になると考えられます。
- ステップ1「研修の企画」 ・・・ 約1ヶ月
- ステップ2「eラーニング原稿作成」 ・・・ 約1ヶ月
- ステップ3「eラーニング動画制作」 ・・・ 約1ヶ月
- ステップ4「LMSの選定」 ・・・ 約2ヶ月
- ステップ5「LMSでの配信設定」 ・・・ 約1ヶ月
本助成金は、2026年度いっぱいまで(2027年3月まで)の期間限定で実施されることが決まっており、2025年5月から準備を始めたとすると、2025年8月まで準備を行って9月から事業を開始し、事業を実施できる期間は19ヶ月間ということになります。

人材開発支援助成金対応のeラーニングビジネス立ち上げを支援
助成金の期間が決まっているため、1日でも早く事業を開始して、1日でも長く事業を実施できた方が売上アップにつながることは申し上げるまでもありません。本記事を参考にeラーニング事業の立ち上げに取り組まれる企業様が増え、ひいては日本企業の競争力強化につながっていけばうれしいことだと思います。
弊社では、助成金の機能要件に対応したLMS「Qualif(クオリフ)」の提供だけにとどまらず、教材設計のアドバイスからコンテンツ制作、LMS運用のご支援までをトータルでサポートしています。単なるシステム屋ではなく、貴社の事業の成功のためのパートナーとして、eラーニングビジネスを成功させるための様々なノウハウをご提供しています。
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