新規事業としてeラーニングビジネスを立ち上げることは、研修コンテンツの販売という新たな収益源の創出や顧客価値の向上につながる可能性があります。しかし、成功には正しい「考え方」と「システム構築」が必要です。本記事では、新規ビジネスとしてeラーニングビジネスに取り組む際に押さえておくべき要点、基本的な業務フロー、そしてシステムに求められる基本機能について解説します。
なぜeラーニングビジネスに取り組めないのか
「当社は研修会社としてeラーニングに取り組むべきだ」と分かっていても、新規ビジネスとしての取り組みが開始されていない場合もあるでしょう。それは、eラーニングのサービス提供・教材コンテンツ販売(講座販売)に取り組んだほうが良いことは分かっているが、スキルと意識が追いついていないことがその理由かもしれません。背景を紐解くと、主に次の3つの理由があるように思います。
研修会社でeラーニングに取り組む人材の不足
多くの研修会社では、研修講師や営業担当者は抱えていて、対面型の集合研修の企画や実施はお手のものである一方、LMSを含めたITを活用した研修を企画・設計し、教材コンテンツをデジタル化し、ITプラットフォームを導入する知識を有する人材が不足しているのが現状ではないでしょうか。
特に、新しい研修を企画・設計できる人材は貴重です。AIやDX関連の新しい研修を企画したり、オンデマンド型のeラーニング研修の効果的な実施や販売方法を設計したりするには、これまで実施してきた集合研修の常識を一度捨てて、新規ビジネスをゼロベースで考える必要があり、研修講師とはまた異なるスキルが求められます。
eラーニングシステム(LMS)導入ヘの不安感
eラーニングシステム(LMS)を選定する際には、ユーザ数の多寡や一般的な評判に惑わされずに、自社のビジネスにフィットするシステムを選ぶ必要があります。
そのためには、
①自社の業務要件を明確にする
②LMSに求める機能要件を明確にする
③LMSベンダーに機能ごとの実現可否を問い合わせ、その回答のウラを見抜く
というステップが必要です。
特に重要なのが②の「LMSに求める機能要件を明確にする」です。自社に必要な機能の粒度が大きいとベンダーからの回答に差が出づらくなり、自社にあったシステムを見極めることが難しくなります。
例えば、「ユーザの受講履歴を見ることができる」という要件だと、粒度が大きすぎるため、すべてのLMSが実現可能という回答になります。研修会社として、受講履歴のどのようなデータが必要で、それを誰がどのように見るかまで分解する必要があります。
社内における、変化への抵抗文化
研修会社がeラーニング事業を拡大しようとすると、集合研修を担当する講師から反対の声が挙がることがあります。反対の理由を突き詰めると、その根本には、新規ビジネスによって今の自分の仕事が変わってしまうのではないかという「不安」があります。
研修講師のケースでは、
①今よりも仕事が増えるかもしれない不安
→集合研修に加えてeラーニングの仕事も押しつけられるのではないか
②今よりも仕事が減るかもしれない不安
→eラーニングに力をいれるために集合研修の仕事が減らされてしまうのではないか
という2つが考えられます。施策を推進する際には、これらの不安に対する回答を用意しておく必要があります。
▼「eラーニングビジネス」の立ち上げ方、
スモールスタートで始めてすぐに収益化する方法を詳しく知りたい方!
⇒資料の無料ダウンロードはこちら
eラーニングに取り組むためには何が必要か
このように技術的な面とマインド面での課題があり、研修会社がeラーニングビジネスに取り組むためには、他の新規ビジネスと同様に覚悟が必要です。以下に示すような、eラーニングに取り組むために必要なことを、自社に当てはめて考えてみましょう。また、すべてを自社だけで実施する必要はありません。教材コンテンツのデジタル化など、必要に応じて外部のパートナーの力を借りることも検討してみましょう。
eラーニングに関するノウハウとスキル人材
eラーニングを提供するためには、
・販売するeラーニングコンテンツ
・eラーニングを配信するシステム(LMS)
の2つを準備する必要があります。
eラーニングコンテンツは、研修会社のコアとも言えるものであり、基本的には自社の資産として保持・販売をしていきます。そのため、企画から制作までを研修会社自身で行うケースが多いでしょう。
eラーニングシステムは、自社で開発するケースは少なく、LMSベンダーのサービスの中から自社にあったものを選定して利用します。LMSの選定と運用業務を実施できる人材が社内に必要です。
経営者の強いリーダーシップ
新規サービスを立ち上げるには、経営者、事業責任者の強いリーダーシップが重要です。既存研修事業の収益確保のために集合研修サービスなどの優先順位がどうしても上がるのは当然のことです。しかし、eラーニングを通じた研修コンテンツの販売サービス(講座販売)が今後のビジネス成長に貢献することは明らかであり、かつ、お客様の利便性も向上するため、強い意志でやり抜く必要があります。
その際には、社員の気持ちを汲みながら進めることが欠かせません。人はロジックだけでは動きません。新しい取り組みに対する社員が抱く漠然とした不安感を、ロジック面や心理面から解消することで初めて、皆が足並みをそろえて新規事業に取り組めるようになります。
外部パートナーとの連携によるeラーニングのサービス価値向上
eラーニングの提供には教材コンテンツの制作とLMSのような配信システムの導入が必要ですが、必ずしもすべての業務を自社内で行う必要はありません。限られた自社のリソースを使うべきコアを見極めて、それ以外の部分は信頼できる外部のパートナーの力を借りながら進めるのがよいでしょう。
eラーニングコンテンツ制作では、講座コンテンツの企画・設計は自社で行って、撮影や編集などの作業は外部に任せたり、LMSについては、システムの選定は自社で行い、運用はそのベンダーに任せたり、といった切り分けをすることで、研修会社としての自社の強みが最も発揮できる座組みの実現を目指します。
▼「eラーニングビジネス」の立ち上げ方、
スモールスタートで始めてすぐに収益化する方法を詳しく知りたい方!
⇒資料の無料ダウンロードはこちら

LMSを使ったeラーニング業務運営フローの基本形とは
LMSを利用したeラーニング業務の運営フローには「型」があります。販売や問い合わせ対応、受講状況の確認など、基本を押さえながら自社に合わせて決めていきます
LMSを利用したeラーニング業務フローの基本の「型」

LMSに求められる機能は主に「受講者機能」と「管理者機能」に分けることができます。たとえば一つひとつの教材コンテンツを個別に販売するには、受講者機能としての「購入・決済」機能が必要になります。それにともなって、「入金確認」や「購入状況確認」といった管理者機能が必要です。新たな講座をすぐにアップして購入できるような機能や、確認テスト、より良い内容にしていくためのアンケート機能、問い合わせ機能など、型の中で必要になる機能もあります。自社の業務運営フローを考えた後は、必要な機能を整理してみましょう。
反対にLMSにある機能から運営のフローを定義することもできます。LMSには通常必要とされる機能がそろっており、他社が運営する中で必要だったベストプラクティスが組み込まれています。LMSベンダーと相談しながら最適な運営フローを考えていくのも一つの方法です。Qualif(クオリフ)であれば、オンライン自社ブランドでのオンライン学習講座販売ショップを簡単に構築できます。
eラーニング業務運営で必要なLMSの基本機能

このように、「ノウハウとスキル人材」「経営者の強いリーダーシップ」そして、「外部パートナーとの連携によるサービス価値向上」の3つを重視しながら、事業運営の「型」を定義して適切なプラットフォームを選ぶことで、研修会社が新規ビジネスとしてのeラーニングの実現に1歩近づくことができます。