「人材開発支援助成金の4コースをクイックに理解する」

人材育成や社内研修の強化を目指す企業にとって、「人材開発支援助成金」は非常に心強い制度です。特に昨今、DX推進やリスキリングの必要性が高まる中、オンライン講座などを活用した教育施策は、ますます重要性を増しています。

しかし、実際に助成金の活用を検討すると、
「制度が複雑でよくわからないし、申請が大変そう」
「自社に合うコースはどれか迷う」
と感じる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、「人材開発支援助成金」の4つのコースについて、それぞれの特徴を、わかりやすく解説します。

※助成金の詳細は、必ず下記の厚生労働省のウェブサイトでご確認ください。
人材開発支援助成金|厚生労働省

目次

「人材開発支援助成金」とは?

厚生労働省が実施する「人材開発支援助成金」は、企業が従業員に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。

「人材開発支援助成金」が注目されている背景は、主に下記の3点です。

  • 少子高齢化による労働力不足
    働き手の数が年々減少し、経験豊富な人材の確保が困難になる中、社内の人材を育成・活用することが企業の持続的成長の鍵となっています。
  • DX・AIの進展による産業構造の変化
    IT技術やAI活用による自動化等の波がすべての業界に広がり、必要なスキルが激変しています。この変化に柔軟に対応できる人材の育成が急務です。
  • 政府によるリスキリング支援政策の強化
    人への投資を重点政策とする政府の方針により、リスキリング支援が 加速しています。また、各種助成制度も拡充されつつあります。これらの変化に対応するため、国としても企業に対して柔軟なスキル形成支援を行う必要があり、その柱のひとつがこの助成制度なのです。

「人材開発支援助成金」4つのコースの特徴

人材開発支援助成金の4つのコースについて解説します。

  1. 人材育成支援コース
  2. 教育訓練休暇等付与コース
  3. 人への投資促進コース
  4. 事業展開等リスキリング支援コース

申請・認可の条件は、各4コースで異なります。必要な人材育成計画に沿ってコースを選択し、認可に必要な条件に合致する必要があります。

それぞれについて、概要を解説します。

1.人材育成支援コース

人材育成支援コースは、雇用する労働者に対して、職務に関連した専門知識・技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。

  • 給対象者
    事業主:雇用保険適用事業所の事業主
    労働者:雇用保険被保険者
  • 支給対象となる訓練(研修)
    ①人材育成訓練:10 時間以上のOFF-JTによる訓練
    ②認定実習併用職業訓練:新卒者等のために実施するOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練
    ③有期実習型訓練:有期契約労働者等の正社員転換等を目的として実施するOJTと OFF-JTを組み合わせた訓練
  • 助成率・助成額
    助成は以下の3項目に対して行われます。
    • 経費助成・・・訓練にかかった費用の補助
    • 賃金助成・・・訓練中の受講者の時間あたり賃金の補助
    • OJT実施助成・・・実地訓練(OJT)を実施した場合の補助

( )内は中小企業以外の事業主への助成率・助成額です。
注1:e-ラーニング、通信制による訓練は経費助成のみです。
注2:訓練終了後に行う訓練実施者による評価で訓練前の賃金の支払い額を比較して5%以上上昇している場合、または、資格等手当の支払を就業規則等に規定した上で、訓練終了後に訓練受講者に対して、当該手当を支払い、かつ、当該手当の前後の賃金を比較して、3%以上上昇している場合に、助成率などが加算されます。
注3:正社員化した場合に助成。有期型訓練を実施したものの、結果として、対象労働者の正規雇用労働者への転換が実施されなかった場合であっても、支給決定までに以下の要件を満たした場合には、「人材育成訓練」の助成内容により助成対象となる場合があります。
・職業能力開発推進者を選任していること
・事業内職業能力開発計画を策定・周知していること
・定期的なキャリアコンサルティングの機会の確保について定めていること

  • 経費助成限度額
    受講者1人1訓練あたりの経費醸成限度額と、1年度1事業所あたりの助成限度額は、それぞれ以下の通りです。

注4:賃金助成限度額(1人1訓練あたり)は1,200時間。専門実践教育訓練については、1,600時間。
注5:同一訓練を複数回実施する場合は、1年度で3回まで(有期実習型訓練については同一の事業主が同一の労働者に対して1回まで)

  • 経費助成利用例
    「①人材育成訓練」で正規雇用労働者1名に、受講料5万円の「集合研修」を10時間実施した場合は、下記の助成額となります。
    • 経費助成率(通常分・中小企業):45%
    • 経費助成額:50,000円×0.45=22,500円
    • 賃金助成額:800円×5時間=4,000円
    • 実質受講料:50,000-(22,500+4,000)=23,500円

なお「eラーニング」を実施した場合は賃金助成がないため、実質受講料は、50,000-22,500=27,500円となります。

引用元:令和7年度版 人材育成支援コースのご案内(令和7年4月1日版)

2.教育訓練休暇等付与コース

教育訓練休暇等付与コースは、企業が従業員の自主的な職業能力開発を受ける機会を確保することを目的としています。

  • 支給対象となる教育訓練休暇制度
    対象となる制度は、次の①~⑤の全ての要件を満たす必要があります。 
    ①被保険者を対象とした教育訓練短時間勤務等制度であること。
    ②所定労働日において、30回(1日に複数回利用した場合は1回とみなす)以上の所定労働時間の短縮および所定外労働時間の免除のいずれも利用することが可能な教育訓練短時間勤等制度を就業規則または労働協約に制度の施行日を明記して規定するものであること。
    ③教育訓練短時間勤務等制度による所定労働時間の短縮は、1日につき1時間以上所定労働時間未満の範囲で1時間単位で措置できるものとすること。
    ④制度を規定した就業規則または労働協約を、制度施行日までに雇用する労働者に周知すること。就業規則については、制度施行日までに管轄する労働基準監督署へ届け出たものであること※。また、労働協約については、制度施行日までに締結されたものであること。
    ⑤被保険者が業務命令でなく、自発的に教育訓練を受講できること。
  • 助成率・助成額
    助成は、この制度を導入した事業主に対して行われます。賃金要件または資格等手当要件を満たす場合は、加算があります。

※1賃金助成は、長期教育訓練休暇の取得日において、当該休暇を取得する被保険者に対して、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の額以上の額を支払う場合に支給されます。1人あたりの賃金助成対象時間数の上限は1600時間(大企業の場合は1200時間)です。なお、賃金助成の対象となる被保険者の人数に対する上限はありません。
※2制度導入・実施助成は、新たに制度を導入する場合に支給されます。なお、制度導入・実施助成は、事業主(企業)単位で、1回限りの支給となります。
※3賃金要件又は資格等手当要件を満たす場合の加算額です。

引用元:令和7年度版 教育訓練休暇等付与コース・人への投資促進コース(長期教育訓練休暇等制度)のご案内(令和7年4月1日版)

3.人への投資促進コース

人への投資促進コースは、高度な専門的知識やスキルを従業員に習得させるための訓練を行った企業に対して、訓練費用や訓練期間中の賃金の一部などを助成する制度です。令和4年~8年度の期間限定助成です。

特に注目されているのは、デジタル・AI・環境など、今後の成長が期待される分野への人材育成を強力に支援している点です。

  • 支給対象となる訓練メニュー
  1. 定額制訓練
    従業員従業員の方がサブスクリプション型(定額受け放題型)の研修サービスを利用した場合に助成します。
  2. 高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練
    DX推進や成長分野などでのイノベーションを推進する高度人材を育成する場合に助成します。
  3. 自発的職業能力開発訓練
    従業員の自発的な学びを支援します。
  4. 情報技術分野認定実習併用職業訓練
    資格取得費用も対象となります。
  5. 長期教育訓練休暇等制度
    教育訓練休暇や教育訓練短時間勤務制度を導入し、労働者の自発的な職業能力開発を促進した場合に助成します。賃金助成に人数制限はありません。
  • 助成率・助成額

定額制訓練

高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練

自発的職業能力開発訓練

情報技術分野認定実習併用職業訓練

長期教育訓練休暇等制度

  • 経費助成限度額

1事業所1年度あたり

受講者1人あたり

※ 実訓練時間数が100時間未満/100~200時間未満/200時間以上によって変動。
※ 「定額制訓練」と「自発的職業能力開発訓練」の受講回数はそれぞれ3回までに加えて、「定額制訓練」と「自発的職業能力開発訓練」の定額制サービスによる訓練と、事業展開等リスキリング支援コースの定額制サービスによる訓練を合わせて、3回まで。
※「長期教育訓練休暇等制度」は、経費助成を1事業主1回まで(定額)。賃金助成の人数は制限なし。

引用元:令和7年度版 人への投資促進コースのご案内(令和7年4月1日版)

4.事業展開等リスキリング支援コース

事業展開等リスキリング支援コースは、企業が事業展開や業務転換等に伴い、従業員に対して新たな知識や技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成するものです。特に、デジタル技術の導入や業務プロセスの改善等、企業の変革を支援することを目的としています。

  • 支給対象者
    • 事業主:雇用保険適用事業所の事業主
    • 労働者:雇用保険被保険者
  • 支給対象となる訓練(研修)
    ①訓練時間数が10時間以上であること
    ②OFF-JT(企業の事業活動と区別して行われる訓練)であること
    ③職務に関連した訓練で、以下のいずれかに該当する訓練であること
    • 企業において事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練
    • 事業展開は行わないが、事業主において企業内のデジタル・デジタルトランスフォーメーション(DX)化やグリーン・カーボンニュートラル化を進めるにあたり、これに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
  • 助成率・助成額

助成率・助成限度額

受講者1人あたりの経費助成限度額

注1:e-ラーニング、通信制、定額制サービスによる訓練は経費助成のみです。注2:定額制サービスによる訓練の経費助成限度額は、受講者1人1月あたり2万円です。

引用元:令和7年度版 事業展開等リスキリング支援コースのご案内(令和7年4月1日版)

「事業展開等リスキリング支援コース」に対応した研修をeラーニング研修の形で提供する場合には、
・10時間以上の長さの動画eラーニング研修を提供する
・受講者がeラーニング研修動画を10時間以上受講する
・受講した履歴がLMSに正しく記録される
・受講企業側で研修受講の事前と事後に労働局に対して申請を行い認められる
という条件を満たすと、受講企業に対して研修費用の最大75%(中小企業の場合)の経費助成があります。

  • 経費助成利用例
    受講費用30万円のeラーニング研修を中小企業の従業員10名が受講した場合、
    ・研修提供企業の売上:30万円×10人=300万円
    ・研修受講企業への助成額:300万円×75%=225万円
    ・実質受講料:300万円-225万円=75万円(1人あたり7.5万円)
    となり、研修提供側は売上をしっかりと確保しつつ、受講側は負担を抑えることができるため、研修提供側・受講側の双方にメリットがある制度です。

なお、事業展開等リスキリングコースの助成金には、賃金助成額=研修受講時間1時間あたり1,000円の助成金も設定されていますが、eラーニング研修には適用されません。eラーニング研修に適用されるのは上述の最大75%の経費助成のみとなっています。

いろいろなブログ等で、「人材開発支援助成金で最大90%助成される」などと書かれていることがあるのは、経費助成と賃金助成の両方が適用される対面での研修(集合研修)の場合を指しています。eラーニングの場合は当てはまらないことにご注意ください。

「人材開発支援助成金」コースの選び方

人材開発支援助成金の4つのコースは、企業が従業員のスキルアップや再教育を行う際に、経済的な支援を受けることができる有効な制度です。各コースの特徴を理解し、自社の人材育成計画に適したコースを選択することで、効果的な人材育成が可能となりますが、自社どのコースを選択すべきか分かりにくい…という方も多いのではないでしょうか?

厚生労働省が公開しているフローチャートを活用すれば、適切なコースを判断する材料となります。

Ⅰ申請事業主が業務命令で対象労働者に訓練を受講させる場合

  • OFF-JTを行う場合
  • OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練を行う場合

Ⅱ申請事業主が、自発的に訓練を受講する労働者を支援する場合

フローチャートは簡易的な判断材料です。実際の申請にあたっては、希望するコースのパンフレット等で詳細な支給要件を必ずご確認ください。

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