世の中の変化の速度がますます速くなり、これまでに身に付けた知識がすぐに古くなってしまう時代。新しい知識やスキルを身に付けるために、資格試験や検定試験にチャレンジする人が非常に増えています。
企業においても、取得費用を補助したり、年間に複数の資格を取得することを義務づけるところもあったりと、社員の資格取得を後押しする動きが活発になってきています。
一方で、資格試験や検定試験の数も増えてきており、受験者の取り合いという状況になりつつあります。
そのような背景がある中で、特に新しい資格試験や検定試験の実施団体の方々にとって、受験者に選ばれる試験になるためのカギの一つが「試験勉強のしやすさ」であると言われています。
資格試験に挑戦する受験者のニーズは、いま大きく変わってきています。以前は資格が取れれば良い、保有する資格の数が増えれば良いという、質よりも量を重視する受験者が多くいましたが、最近は資格試験の勉強を通じて、実践的な知識やスキルをきちんと身に付けたいと考える受験者が増えています。
従来のように、過去問だけ公開しておいて後は受験者任せにするのではなく、どのような学習体験を受験者に対して提供するかをきちんと設計していくことが求められています。
そのための方法の1つとして、本記事では、資格試験実施団体がeラーニングを導入すべき3つの理由、動画講座を制作しLMS(Learning Management System)で配信するステップやメリットを解説していきます。
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資格試験受験者のニーズとは?
資格試験・検定試験の受験者は、いま何を求めているのでしょうか。
「試験に合格して資格を取得すること」は、誰にとっても重要なゴールであることは言うまでもありません。しかし、そのゴール達成のための受験対策講座に対するニーズが、大きく変化してきていることに、多くの資格試験実施団体はまだ十分に気づいていらっしゃらないかもしれません。
受験者が重視するポイントは、「いつでも・どこでも学べる柔軟性」や、「自分の理解度に応じて、繰り返し学べる安心感」、そして「動画や図解など、直感的に理解できる工夫」といった、学習教材の学びやすさやアクセスのしやすさの比重が大きくなってきています。
下記は、Coeto株式会社の「Z世代(1996年〜2008年生まれ)の勉強方法」に関する調査結果です。

引用元: 「Z世代の勉強方法」に関する調査が実施 – Digital Shift Times(デジタル シフト タイムズ) その変革に勇気と希望を
*「Z世代の98.7%が、勉強中に何らかの形でスマホを活用しており、具体的なものとして、SNS・動画配信サービスが32.6%、検索エンジン・辞書/翻訳ツールなどが25.7%と、この二つで半数以上を占めている。Z世代以外で最も多かったのは、「先生に聞く」「教科書・参考書を使う」で50.5%と半数を超えているのに対し、Z世代では25.5%と約半数の結果となった」
Z世代にとって学びのお供はスマホであり、スマホで学習できる環境がない資格試験・検定試験は選ばれなくなってきているといっても過言ではありません。
受験者が「学びたい」と思った瞬間に、すぐ学習教材にアクセスできる環境を整えること。
資格試験実施団体としての社会的使命を果たしつつ、受験者数の安定的な確保や事業収益の多様化を図っていくためには、時代に即した「学習手段の提供方法」の見直しが重要であり、これはつまり、自分たちの過去の経験に基づいたプロダクトアウトの視点ではなく、「受験者の視点」から教材や講座の提供方法を見直すマーケットインの発想で、事業を見直すことが必要なのです。
資格試験実施団体が「eラーニング」を導入すべき3つの理由
理由1:受験者の学習スタイルが「スマホ動画」一択になりつつある
昨今は「タイパ(タイムパフォーマンス)=時間対効果」を重視する傾向が強まり、スキマ時間に効率よく学べるスマホ動画が選ばれやすくなっています。
従来の「紙のテキストを読む」といった学習法に変わって、「スキマ時間に動画を見る」「スマホでテストに挑戦する」といったスタイルが主流になりつつあります。
例えば、働きながら資格取得を目指す社会人にとっては、通勤途中の電車の中でテキストを広げて勉強をすることは難しいですが、スマホはいつでも携帯しており、狭い車内で動画を視聴することが可能です。
また、育児や介護などで外出が難しい方や、地方在住で大都市での受験対策講座に参加しづらい方などに対しても、スマートフォンで学習できるeラーニング教材を提供することで、学習機会を提供することが可能となります。
理由2:自分自身成長の機会としたい
2000年代初頭に資格試験の一大ブームがあり、何十という資格を保有している方がテレビで取り上げられたりしたことがありました。
しかし最近は、資格の数(量)よりも質を重視する傾向が強くなっており、さらに、「資格に合格するだけ」では不十分であり、「試験勉強を通じてしっかりとした知識を増やしたい」と考える受験者が増えています。本質的な学びを通じて知識を実務に活かす力がなければ、この厳しい時代を生き抜いていけないと感じているからです。
こうした状況においては、試験に合格することそのものに加えて、「学習を通じて自分の成長が感じられる」といったポジティブな体験を提供することが重要になります。
eラーニング教材を通じて「できなかったことが、できるようになる」小さな成功体験を積み重ねることで、学習の満足度が高まり、合格率の向上や口コミによる受験者の拡大も期待できます。
理由3: 自習だけでは続かない
合格するには継続的な学習が不可欠ですが、多くの人にとって「一人で黙々と勉強し続ける」ことは簡単なことではありません。
「やる気が続かない」「何をどこまでやればいいかわからない」といった理由で、途中で挫折してしまう受験者も少なくありません。
資格試験実施団体が「勉強ができる人だけが受かればいい」というスタンスでいるならば、受験者に選ばれ続けることは難しいでしょう。
前述した理由の2番目では「資格取得のためだけでなく、しっかり知識を身につけ実務に活かしたい」と考える受験者が増えていることに触れました。
とはいえ、いくら勉強意欲があっても、「独りで頑張って」と冷たくされてしまうと、多くの人が途中で挫折してしまいます。
多くの受験者が真に求めているのは、「自分に合ったやり方で学習を進められる一方で、必要なときには寄り添ってくれる」、そういう学習環境です。受験者の不安や疑問に丁寧に応えながら、確実にゴールまで導く「伴走型の学習支援」の提供が、選ばれる試験の条件の一つになってきています。
単に過去問を提供するだけでなく、「合格までしっかりサポートしてくれる体制」を構築できるかどうかが、今後の試験運営の成否を分ける重要な要素になってくるでしょう。
以上の「eラーニングを導入すべき3つの理由」に対応できる解決策の1つが、合格までの道筋をしっかり設計した「eラーニング動画教材」の提供です。
eラーニングであれば、動画によるわかりやすい解説と学習管理が可能になり、受験者一人ひとりの進捗に応じたフォローも行えます。資格取得を目指すために重要な「自分のペースで学べる」ことと「挫折させない仕組み」の両方を提供することが可能なのです。
eラーニング提供に必要な2つの要素
では、eラーニングを始めるためには何が必要なのでしょうか?
大きく分けて、以下の2つが欠かせません。
① eラーニング動画教材(eラーニングコンテンツ)を作成する
まずは、受験者が理解しやすく、合格につながる教材を作成すること。
わかりやすいスライド、体系立てた解説、重要ポイントを押さえた演習など、「動画ならではの伝わりやすさ」を活かすことが成功のカギになります。
② 教材を配信システム(LMS:Learning Management System=eラーニングシステム)を用意する
次に必要なのが「教材を配信する仕組み」です。eラーニング動画教材を配信するためのシステムのことを「LMS(Learning Management System:学習管理システム)」と呼びます。このLMSを活用すれば、学習進捗の管理、受講履歴の把握、テストの実施などがすべて一元化できます。ログの取得やレポート機能を使えば、講座の改善にも役立ちます。
参考記事はこちら!
「eラーニングビジネスを始める際に必要なものとは?」~LMSとコンテンツの重要性とは? 自社でLMSを持つべきか? – Qualif eラーニングラボ
では、eラーニングコンテンツの制作フローとLMS導入のステップについて、より具体的にご紹介します。
eラーニングコンテンツの制作フロー
eラーニング教材を効果的に届けるためには、「わかりやすく・飽きさせず・印象に残る」設計が重要です。ここでは、動画教材を制作するための5つの基本ステップをご紹介します。

01. 教材企画|誰に・何を・どう伝えるかを決める
最初に行うのが「教材企画」で、教材の設計図を作成する工程です。
- 対象となる受講者は誰か?(例:初心者向け?資格試験対策?)
- 受講者は何を学べるようになるべきか?(ゴール設定)
- 全体をどんな章立て・構成にするか?(カリキュラム設計)
たとえば、「簿記3級を目指す初心者向けの講座」であれば、基本的な用語の説明から始めて、実際の仕訳問題まで段階的に進める構成を考えます。
02. 原稿執筆 (話す内容・スライドの中身を言葉に落とし込む)
企画ができたら、講師が話す内容やスライドで表示する情報を原稿として文字に起こします。
- スライドに表示するキーワードや図表
- ナレーションや講義のセリフ
- 事例や補足説明
このステップでは、難しい言葉を使いすぎないようにしたり、聞き取りやすい語順を意識したりするのがポイントです。実際に声に出して読んでみると、わかりにくい部分に気づきやすくなります。
03. 素材制作 (スライドやイラスト・図表を用意する)
次に、原稿に沿ってスライドや必要なビジュアル素材をつくります。
- PowerPointやGoogleスライドを使って、スライドを作成
- 必要に応じて図解、イラスト、写真なども用意
- スライド1枚につき1つのトピックを扱うようにし、見やすく整理
たとえば、税率の説明をするなら「表」や「図」で比較できるようにすると、受講者の理解がぐっと深まります。色使いやフォントも見やすさを意識しましょう。
04. 動画撮影・制作 (実際に講義を収録し、編集する)
準備が整ったら、いよいよ動画を撮影・編集します。
- 講師がスライドに合わせて話す「講義形式」
- ナレーションだけで進行する「スライド解説形式」など、形式を選択
- スマートフォン+三脚+照明でも、十分綺麗に撮影可能
撮影後は、テロップの追加・不要部分のカット・チャプター分け(10分以内が目安)などの編集を行い、視聴者が集中しやすい工夫を施します。
また、動画編集は、初心者であれば「Canva(キャンバ)」や「iMovie」などの無料版でも十分対応可能です。慣れてきたら「Adobe Premiere Pro」などの本格的な編集ソフトも活用しましょう。
05. 販売/配信準備 (LMSで公開・配信する)
最後に、完成した動画教材をどのように届けるかを決め、配信・販売の準備を行います。
- LMS(学習管理システム)に動画をアップロードし、受講者を管理
- プロモーション用の紹介動画をYouTubeで配信するのも効果的
たとえば、「一部をYoutube無料公開して、続きをLMSで購入できるようにする」など、導線を設計しておくことで、効率的に受講者を集めることができます。
丁寧な設計と工夫を重ねることで、受講者にとって価値あるeラーニング教材が完成します。制作の各段階において、「誰に、何を、どう伝えるか」という視点を大切にしましょう。
参考記事はこちら!
「eラーニングコンテンツ内製化」徹底解説シリーズ ①/5 ~社内ですぐに始められる失敗しない段取りとは?~ – Qualif eラーニングラボ
配信方法の選択肢|YouTube or LMS
YouTubeは世界最大級の動画共有サイトであり、公開するだけで多くの人の目に触れるチャンスがあるのが最大の魅力です。
資格試験実施団体の認知拡大、ブランド訴求、集客などの目的には非常に適しています。ただし、以下のような制約やリスクがある点には注意が必要です。
- 誰がどこまで視聴したか(学習ログ)が取得できない
→ 受講者の進捗管理や学習状況の把握ができません。 - 限定公開のURLが簡単に転送・拡散されてしまうリスクがある
→ 本来、有料または限定の受講者だけに見せるはずのコンテンツが、無断で第三者に共有される可能性があります。 - 有料販売や受講者ごとのアクセス制御には対応していない
→ 利用目的によっては、セキュリティやマネタイズ面で限界があります。
そのため、YouTubeは本格的な講座の提供には不向きですが、プロモーション動画や無料体験コンテンツを配信する場としては非常に有効です。
一方で、LMS(学習管理システム)は、動画教材の配信だけでなく、学習履歴の記録、受講管理、テスト機能、受講者とのやりとりなどを一括で行えるプラットフォームです。たとえば、以下のようなことが可能です。
- 誰がいつ、どのコンテンツを、どこまで学習したかのログ取得
- 受講者ごとのアカウント設定・アクセス制御
- 動画の有料販売や利用期間の設定
- テストやアンケートによる理解度チェック
- 修了証の自動発行 など
LMSは、「資格試験実施団体で計画的にeラーニングでの学習を促進する」といった目的に非常に適しています。セキュリティやサポート体制も整っていることが多く、安定した学習環境を構築できます。
参考記事はこちら!
「YouTubeとLMSの違いを徹底比較」~eラーニング教材販売ビジネスに使えるのはどちら?~ – Qualif eラーニングラボ
eラーニングコンテンツの販売に使えるLMSやシステムとその用途 – Qualif eラーニングラボ
今後の試験対策講座のあり方
「試験の時しか関わらない」団体から、「いつでも学びを提供してくれる」団体を目指すためには、資格試験対策講座のeラーニング化は有効な施策です。
定期的な講座更新や新しいコンテンツの追加を通じて、受験生との持続的な関係と収益源を確保できます。また、資格取得後のフォローアップ講座や、上級資格に向けた追加講座を提供すれば、売上向上につながります。
さらに、SNSやLMSでの通知機能を使い、動画の更新や合格者インタビューなどを定期的に発信することで、継続的な関係づくりが可能になります。
また、eラーニングのコンテンツの提供はスケーラブルであり、追加のコストを抑えながら多くの受講者にサービスを提供できます。
動画コンテンツの制作は決して難しくありません。まずはPowerPointファイル1つから、ナレーション付き動画を作成し、LMSにアップしてみましょう。
LMSについては、どれを選んだら良いか、何を基準にすべきかなど、検討課題が多くあります。また、eラーニングの投資対効果を見通すノウハウが不足しているために、新たな投資に消極的にならざるをえない点も挙げられます。
資格試験対策講座をeラーニング化することで、講師の稼働に依存しないコンテンツが提供でき、品質の均一化とサービスの向上が図れます。
eラーニングは、単なる教材の配信手段ではなく、資格試験実施団体の「信頼性・教育力・ブランド」を育てるための基盤ともいえます。
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