「採用ができない」「人は入ってもすぐ辞めてしまう」
多くの企業が抱えるこの課題は、もはや一部の業界に限ったものではありません。今、企業に求められているのは、今いる人を育て、活躍させる力です。しかし、現場は常に忙しく、教育に十分な時間やコストを割けない企業も少なくありません。 育成担当者もトレーナーも負荷が高く、体系的な育成体制を整えることは簡単ではないのが実情です。
そこで注目されているのが、教育投資を最大化する人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」と、キャリアアップ助成金「正社員化コース」の併用です。
令和7年度の制度変更により、キャリアアップ助成金・正社員化コースの受給条件が変更され、通常の正社員化は昨年度までの80万円から40万円に減額されてしまいました。
しかし、重点支援対象者を正社員化することで、最大80万円を受給することが可能になります。また、人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」を受講すれば、かかった費用の最大75%が助成されます。
本記事では二つの助成金を併用する方法について、詳しくない方にもわかりやすく解説します。
採用難時代の育成コスト圧縮
本記事でお伝えしたいことは、キャリアアップ助成金を活かすなら先に研修!というポイントです。2025年度から正社員化コースの支給額が下がった中でも、「重点支援対象者」に該当する方を正社員化すれば最大80万円を受給できます。その「重点支援対象者化」に使えるのが、人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースのeラーニング研修。つまり、先に人材開発支援助成金対応の研修をeラーニングで受けさせておくことで、あとからキャリアアップ助成金の受給額を倍にすることができる、という順番の工夫がポイントです。
採用が難しくなった昨今、すでに非正規従業員として働いてくれている人を育てて正社員化する流れは多くの会社で共通です。問題は「育成コストをどうやってひねり出すか」。そこで使えるのが人材開発支援助成金で、これを先に回しておくと、後でキャリアアップ助成金を申請するときの条件づくりにもつながります。つまり「育成のコストを助成金で負担軽減しつつ、正社員化した際にも助成金を受ける」設計が、本記事を読めばできるようになります。
人材開発支援助成金とは
人材開発支援助成金は、事業主等が雇用する労働者に、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させる訓練(=研修)を実施した時に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。訓練は、計画に沿って実施することが必要です。
人材開発支援助成金についてはこちら↓
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
人材開発支援助成金には、6つのコースがあります。
本記事ではその中の「事業展開等リスキリング支援コース」について、ご紹介します。
人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」で最大75%助成
人材開発支援助成金・事業展開等リスキリング支援コースは、令和4年~8年度の期間限定の助成金として創設されたものです。
この助成金は、上記の人材開発助成金の中で、特に新規事業の立ち上げなどの事業展開や、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練に対して助成する制度です。
事業展開等リスキリング支援コースの詳細はこちら↓
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001514283.pdf
事業展開等リスキリング支援コースに対応した研修を受講した場合の経費助成率は、中小企業で75%、大企業で60%となっています。つまり、研修受講費用の75%が助成されて戻ってくるため、実質的な負担は25%だけとなります。

支給の限度額は研修時間数に応じて以下の表のように決められており、10時間の研修を受講した場合は、1回あたり30万円(中小企業の場合)まで助成されます。

事業展開等リスキリング支援コースの研修の要件は、以下のように定められています。
- 訓練時間数が10時間以上であること
- OFF-JT(企業の事業活動と区別して行われる訓練)であること
- 職務に関連した訓練で、以下のいずれかに該当する訓練であること
- 企業において事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練
- 事業展開は行わないが、事業主において企業内のデジタル・トランスフォーメーション(DX)化やグリーン・カーボンニュートラル化を進めるにあたり、これに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
上記の1~3の要件について、順に見ていきましょう。
1.について
10時間以上の受講実績が証明できることが必要です。たとえばeラーニングを活用した研修であれば、LMSを導入して実施状況や受講時間をきちんと記録し、その記録を提出する必要があります。
2.について
OFF-JT(OFF-the-Job Training)は通常の仕事と区別して業務の遂行の過程外で行われる訓練です。OJT(On-the-Job Training)のような、通常の業務内での指導は対象外です。
3.について
具体例とともに解説します。
○「事業展開」とは
新たな製品を製造し、または新たな商品やサービスを提供すること等により、新たな分野に進出することが該当します。このほか、事業や業種の転換や、既存事業の中で製品または商品もしくはサービスの提供方法を変更する場合も事業展開にあたります。
例:
・製造業において、新たな半導体工場の建設と運用のための各種技術の習得
・飲食業において、新たな弁当販売業務の予約システム構築のための講座の受講
など。
○デジタル・トランスフォーメーション(DX)化とは
デジタル技術を活用して、業務の効率化を図ることや、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化、風土を変革し、競争上の優位性を確立することを指します。
例:
・建設業において、DX化の測量受注のためのドローン操縦技術の習得
・医療業務において、電子カルテやオンライン診療にAIを活用するためのDX講座受講
など。
○グリーン・カーボンニュートラル化とは
徹底した省エネ、再生可能エネルギーの活用等により、CO2等の温室効果ガスの排出
を全体としてゼロにすることがこれに該当します。
例:
・製造業において、溶解炉を電気炉に変更するために必要な知識と技能の習得
・農業において、農薬の散布をトラクターからドローンに換えるためのドローン技術習得
など。
これらの要件を満たせば、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部として最大75%(中小企業の場合)の助成金を受給することができます。
支給対象事業主や、対象となる労働者について、詳しくは↓
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001514283.pdf
なお、訓練の内容などによって事案ごとに判断が必要となる場合があります。また同一の行為等を対象として2つ以上の助成金等が申請された場合、一方しか支給されないことがあります。 詳細は、管轄の労働局またはハローワークに確認を取りながら進めるようにしてください。
キャリアアップ助成金の「正社員化コース」は2025年度に80万円→40万円に減額
続いて、キャリアアップ助成金について解説します。
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員転換や処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成金を支給する制度です。
令和7年度の制度変更により、キャリアアップ助成金・正社員化コースの受給条件が変更され、通常の正社員化は昨年度までの80万円から40万円に減額されてしまいました。
参考記事はこちら↓
2025年度「キャリアアップ助成金 正社員化コース」の変更点をわかりやすく解説 | Qualif eラーニングラボ
重点支援対象者を正社員化すると、2024年度同様に80万円受給できる
しかし、正社員として雇用する従業員が「重点支援対象者」に該当する場合は、昨年度と同様に、中小企業の場合は1名あたり最大80万円、大企業の場合は1名あたり最大60万円 の助成金を受給することが可能です。
「重点支援対象者」とは、以下のa~cのいずれかに該当する労働者のことを指します。
a:雇入れから3年以上の有期雇用労働者
b:雇入れから3年未満で、次の①②いずれにも該当する有期雇用労働者
①過去5年間に正規雇用労働者であった期間が合計1年以下
②過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない
c:派遣労働者、母子家庭の母等または父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者
上記a~cの条件のうち、事業者が最も実現しやすい条件は、cに挙げられている条件の3番目の「人材開発支援助成金の特定の訓練修了者」を、正社員化することです。
つまり、非正規雇用者に人材開発支援助成金に対応した研修を受講させれば、重点支援対象者に該当させることができ、その労働者を正社員化すれば、キャリアアップ助成金を満額受給できることになります。
人材開発支援助成金には6つのコースがありますが、このうち、キャリアアップ助成金と組み合わせることができるのは、
・人材育成支援コース
・事業展開等リスキリング支援コース
・人への投資促進コース
の3つのみです。
「人材開発支援助成金」厚生労働省の詳細はこちら↓
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
企業が、非正規雇用者に人材開発支援助成金の研修を受講させて、重点支援対象者に該当させる場合、この3コースの中では「事業展開等リスキリング支援コース」が、最も助成率が高く、かつ、eラーニングも対象であるため、取り組みやすいコースです。
キャリアアップ助成金の最大化するためには、先に研修を済ませておく
「キャリアアップ助成金を最大化したいなら、先に研修を受講させておく」――この一手間で受給額が変わります。人材開発支援助成金の対象になるeラーニングを受講させておくと、その人は重点支援対象者に該当し、正社員化コースの受給額が有利になるからです。
- 人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」を受講すれば、かかった研修受講費用の最大75%が助成されます。
- キャリアアップ助成金「正社員化コース」は、重点支援対象者を正社員化することで、最大80万円を受給することが可能になります。
1と2は、併用することができます。
非正規労働者を、2に挙げられている重点支援対象者に該当させるためには「事業展開等リスキリング支援コース」の受講が取り組みやすいです。
つまり、
非正規労働者が人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」の研修を受講することで「重点支援対象者」に該当することになるため、その「重点支援対象者」を正社員化することで、2の最大80万円が受給できます。また、人材開発支援助成金の申請もできるため、1の最大75%も受給することができます。
両方の助成金の要件を満たす上で、eラーニングには大きな利点があります。
参考記事はこちら↓
【2025年度版】キャリアアップ助成金の助成額は半減?人材開発支援助成金対応eラーニングとの組み合わせで“満額80万円受給”を実現する方法 | Qualif eラーニングラボ
クオーク社の提供するeラーニング研修の費用は1人当たり10万円。そのうち75%の7.5万円が人材開発支援助成金として支給されるので、実質の負担額はわずか2.5万円です。2.5万円を負担して、上記の要件を満たす研修を受講すれば、受給額が40万円アップするというわけです。
FAQ(よくあるお問合せ)
Q1 事業展開を実施する予定で訓練を始めましたが、途中で会社の方針が変わり、事業展開をしないことになりました。助成金の申請はできますか?
A 実施する予定であった事業展開に関わる訓練であれば、途中でやめても助成対象になります。ただし、実訓練時間の8割以上を受講していることが必要です。
Q2 アプリやシステムへの文章や数値の入力といった操作方法の訓練は、対象になりますか?
A 職務に間接的に必要な知識や技術の習得は、対象になりません。新規事業やDX化、グリーン・カーボンニュートラル化を進めるうえで必要となる知識・技術の習得のための訓練であることが必要です。
Q3 受講途中の昼食の時間や移動時間は、受講時間に含めることができますか?
A 昼食など食事を伴う休憩時間や移動時間は、実訓練時間数に含めることはできません。ただし、訓練の間の小休止は、一日累計60分まで含めることができます。
なお、訓練の内容などによって事案ごとに判断が必要となる場合があります。不明な点は、管轄の労働局またはハローワークに必ずお問い合わせください。

クオーク(株)では、助成金を最大限活用するための、支援パッケージ「キャリアアップ助成金アシスト10」をご用意しています。
参考記事はこちら↓
キャリアアップ助成金アシスト10 – Qualif紹介サイト 社労士・人事担当者向け|キャリアアップ助成金・人材開発支援助成金に対応するeラーニング研修【Qualif】
クオーク(株)のQualif(クオリフ) | オンライン学習講座販売プラットフォームでeラーニングを効果的に実施し、「キャリアアップ助成金アシスト10」の活用によって助成金を受給して、人材育成とコストの両面で最適化を目指しましょう。
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