LMSの選定方法(機能比較リスト付) ~機能比較で失敗しないために~

LMS(Learning Management System)を比較選定する際に多くの企業が頭を悩ませるのが、「LMSはどの製品も機能が似通っており、どうやって選んだらよいのかが分からない」という点です。LMS以外の様々なシステム、例えば人事システムやメール、会計システム、SFA、CRMなどを導入する際にも製品の比較選定は必要ですが、特にLMSを選ぶのは比較が難しいという声をよく耳にします。

その理由としては以下の4点が挙げられます。

  • 受講者向け機能と管理者向け機能が明確に分かれており、LMS製品の比較選定に関わる担当者が受講者向け機能しか使ったことがないケースが多い。そのため、管理者向けの機能として何が必要かをイメージしづらい。
  • 人材育成の専門家が少ない。CLO(Chief Learning Officer)に類する役職がある企業が少ない。特に、研修実施の効果をどのように測定し評価するかという観点を持ち合わせていない担当者からは、LMSに求める機能比較のアイデアは出てこない。
  • eラーニングを「全社員必須受講のコンテンツの配信」のためのシステムだと考えてしまっている担当者が多い。LMSからするとそれはほんの一部の機能であるため、そこだけを比較されると他のシステムとの差が出ないように見えるのは当然である。
  • LMSベンダー側のビジネスとしても、「全社員必須受講のコンテンツ配信」が最も儲かった時代が長かったため、それ以上の機能開発を行っていないシステムが数多く存在する。それらのベンダーはLMS間の機能の差異を明らかにされたくないため、あえてごまかしている面がある。

これらのハードルを乗り越えて、自社の業務に最適なLMSを比較選定するためにはどうすれば良いのかを解説していきます。

目次

LMSとは何か? なぜ必要なのか?

LMS(Learning Management System)は、eラーニングの実施・運用に必要な機能を備えた管理システムのことで、「学習管理システム」とも呼ばれています。eラーニングコンテンツの作成、配信、受講者の管理、組織の管理、受講の進捗状況の管理までを一元的に行えることが特徴で、20年以上前から学校や企業で多く利用されており、eラーニングの実施を支える重要な役割を担っています。

LMS(Learning Management System、学習管理システム)について、詳しくはこちら!

LMS(Learning Management System:学習管理システム)とは~基本から応用まで、その機能と活用を知る~

本記事でLMSの基本機能、応用機能について理解することで、LMSをより使いこなすことができます。

LMS比較選定時の課題

現状、日本国内で販売されているLMS製品の数は数百に上り、かつ、それぞれの製品はeラーニングの実施に必要な基本的な機能は有していることがほとんどです。そのため、製品を比較する際に基本的な機能の有無だけで比較しても、言い換えると、比較する機能の粒度が大きすぎると、どのLMSもそれらの機能を有しているという結果になり、製品ごとの差がないということになってしまいます。

そこで、弊社では、LMS比較選定の際に参考にしていただける資料として「LMSを比較選定するための機能リスト」を公開しています。これまで20年間で国内外の企業数百社にLMS導入のご支援をしてきた経験より作成したものです。

ぜひ、下記よりダウンロードして確認しながら記事を読み進めてください。

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「機能リスト」を使って比較する方法

「LMSを選定するための機能リスト」は以下の順番で活用をしてください。

  1. この機能リストに書かれている内容を読み、LMSの機能についての理解を深めてください。
  2. 各項目が自社にとって必要かどうかを検討し、必要だと考える機能については「必須」欄に○を付けてください。
  3. このリストを選定候補のLMSベンダーに渡して、「対応可否」欄に「○」「△」「×」を記入してもらいます。この「対応可否」欄が「△」、つまりカスタマイズで対応が可能となった項目については、その隣の「追加費用の有無」欄に記入の上で、詳細を備考欄に記入してもらいます。
  4. 「対応可否」欄の結果を点数化します。例えば、「○」を2点、「△」を1点、「×」を0点として、各ベンダーの製品の点数を計算します。

このように活用いただくことで、一見どれも同じように見えたLMSの差異が明らかになり、自社に最も合った製品を定量的に把握することが可能となり、自社にとって本当に必要なLMSを比較してあぶりだすことができます。

「機能比較リスト」を読み解くポイントを、作成した専門家が解説

機能比較リストに書かれている項目の中でも、特にLMS比較選定のポイントになるものを、受講機能・管理機能の中からいくつか取り上げて、詳しく解説していきます。

LMSにおける受講機能の比較ポイント

受講機能では、次の7つのカテゴリに分けて78項目を挙げています。番号は上述のLMS機能比較リスト内の番号に対応しています。

①受講者トップページ
②ログイン
③管理者への問い合わせ
④お知らせ
⑤コース詳細
⑥学習コンテンツの種類
⑦マイページ

この中で最もポイントになるのは、⑥学習コンテンツの種類でしょう。

中でも「動画」「確認テスト」「アンケート」の3つは、eラーニングを実施する際に必ずといって良いほど利用する機能ですが、一方でLMSによって機能の差が意外と大きい機能でもあります。この日較差の大きなポイントを詳しく見ていきます。

「動画」(LMS機能比較リスト ⑥-4~14)

eラーニングで講義を受講する場合は、動画を視聴するのが一般的です。動画を視聴すると、その受講履歴がLMSに蓄積されていきますが、この受講履歴の蓄積の細かさがLMSによってかなり差があり、LMS比較選定の際にはそこを見極めることが非常に重要です。

「動画が再生でき、その受講履歴が蓄積できること」というような粒度で要件をLMSベンダーに提示したのでは、ほぼすべてのLMSが要件を満たせていることになります。

しかし、中には動画の再生を開始した瞬間に視聴完了と記録されるLMSや、受講者自身が視聴が完了したと自己申告するようなLMSもあります。また、視聴した時間数も、例えば10分の長さの動画を何回視聴しても視聴時間は10分としか記録されないLMSや、冒頭の1分間を繰り返し10回視聴すると10分間の動画をすべて見たと判定されてしまうLMSもあります。

そのようなLMSを選定してしまわないようにするために、動画機能の比較に関しては以下のような要件を提示するとよいでしょう。

  • 動画をストリーミング形式で配信できる。
  • 実際に視聴した時間数が、繰り返し視聴した時間の分も含めて、正確に記録される。
  • 動画を最初から最後まですべて視聴して初めて受講完了となる。
  • いつ、何回視聴したかが分かる。
  • 動画の途中で視聴していない部分がある場合は、どこが未視聴かが分かる。
  • 動画のどの部分がよく見られていて、どの部分があまり見られていないのかが分かる。
  • 動画を操作するボタン類は、YouTube等と同等の機能を持っている。

「確認テスト」 (LMS機能比較リスト ⑥-15~23)

講義を視聴した後に知識の定着具合を見るには、確認テストを受験するのが一般的です。LMSにおいても、動画配信の次によく利用する機能でしょう。

確認テスト機能における比較ポイントは、受講機能に表れる「出題できる設問の形式の豊富さ」と、管理機能に表れる「どのようなデータが取得できるか」という2つです。

出題できる設問の形式については、択一式、複数選択式、○×式、短答式、長文解答式、クリッカブルマップなどから、自社に必要な形式を要件として提示します。

取得できるデータとしては、テストの点数や合否は当然として、以下のような様々なデータが取れれば取れるほど、精緻な分析を行うことが可能となります。

  • 設問ごとの正否
  • 設問ごとの解答内容
  • テスト終了までにかかった時間
  • 設問ごとの解答にかかった時間

これらのデータが、受験した回数分すべて残っているかも重要なポイントです。LMSによっては、最後に受験した結果しか残らないものもあります。

加えて、過去の受験結果をから、間違えた問題だけを繰り返し出題してくれる機能などがあると、資格試験の勉強などに役立ちます。

「アンケート」(LMS機能比較リスト ⑥-24~27)

受講者の意見を集めるためのアンケート機能もLMSの重要な機能の1つです。「アンケートができること」というようなざっくりとした要件ではなく、以下のような項目をLMSベンダーに提示、比較しましょう。

  • アンケートの設問の出題形式として、択一式、複数選択式、○×式、自由記述式などがある。
  • LMSの管理画面でアンケートの設問を作成することができる。(別売りのツールの利用・購入が不要である
  • Excelファイルでアンケートの設問を作成して一括インポートすることもできる。
  • アンケートの結果を管理画面で確認できる。
  • アンケートの結果をExcelファイルでエクスポートすることもできる。
  • アンケートの途中で、回答内容に応じて次の設問を変化させることができる。

以上3つのもっとも基本となる学習コンテンツ以外にも、LMS上で実施できる研修の形態はいくつもあります。ここでは追加で4つ紹介します。

「オンラインライブ研修」

ZoomやTeamsなどを使って行うオンラインライブ研修をLMSから起動することができます。ZoomのURLはメールで届いていたはずだけどどこに行った?!ということがなくなり、受講者も管理者も格段に便利になります。

また、オンラインライブ研修の出欠も自動的にLMSに記録されるので、あらゆるタイプの研修の受講履歴を一元的にLMSで管理できるようになります。

◎集合研修の効率化(LMS機能比較リスト ⑥-28~⑥-30)         

集合型の研修の申込・出欠管理もLMSでできると、研修運用業務の負荷軽減につながります。

受講者自身がLMSの画面から研修日程を選択して申し込みを行い、満席の場合は空席待ちになり、キャンセルが出ると自動的に繰り上がる。研修に出席して、教室でQRコードで出席を記録することができる。集合研修の運営で最も手間の掛かっていた部分の大部分を自動化できるため、業務を大幅に効率化できます。

また、事前にLMSで動画を視聴して予習をし、集合研修に出席して、事後にLMSで確認テストを受験する、といったブレンド型の研修も簡単に作成・実施することができます。

◎SCORM1.2対応(LMS機能比較リスト ⑥-1 ~ ⑥-3)

SCORM1.2 (Sharable Content Object Reference Model)規格に対応したコンテンツを配信する機能です。SCORM 1.2は、SCORM規格の中でも多くのLMSが対応しており、長年にわたり業界で標準的に使用されているバージョンです。

動画を使ったコンテンツは、受講者は画面を見ていることしかできませんが、SCORMコンテンツであれば、受講者にアクションを求めるようなインタラクティブな教材を作り、その操作履歴などをLMSに記録することができます。

「スライド型コンテンツ の配信」 (LMS機能比較リスト ⑥-31 ⑥-32)

PDFスライドを読むタイプのデジタルブック型のコンテンツを配信する機能です。ページごとに、どのページを読んだかが記録され、すべてのページを見て初めてそのコンテンツが学習完了となるとベストです。PDFスライドを開いた瞬間にコンテンツ全体が学習完了になるようなLMSも多いので、受講履歴の記録方法を詳しく確認する必要があります。

LMSにおける管理機能の比較ポイント

管理機能では、下記4つのカテゴリで89項目を挙げています。番号はLMS機能比較リストに対応しています。

⑧管理機能
⑨その他機能
⑩セキュリティ
⑪運用・サポート・その他

中でも「権限」「セキュリティ」「運用・サポート」が注視したいポイントです。

◎システムを利用するユーザの権限(LMS機能比較リスト ⑧-38)

LMSを利用するユーザの権限の種類を確認します。権限によってシステムでできることが決まるので、自分たちがどのようにeラーニング施策を運用していきたいかを考えて、それにあった権限が用意されているのか、また、足りていない権限を追加で作ることができるのかを確認します。

◎セキュリティ(LMS機能比較リスト ⑩-1~ ⑩-9)

セキュリティ対策が十分に行われているかを確認します。システムのプロでないとなかなか難しいので、経産省やIPAの出しているSaaSサービスのセキュリティの指針なども参考にしつつ、情報システム部門とも相談しながら要件を決めると良いでしょう。

◎運用・サポート・その他(LMS機能比較リスト ⑪-1~ ⑪-31)

LMSベンダーのサポートを可能な限り見極めます。特に、そのシステムがどこで開発・運用されているのかは重要です。

開発拠点が海外にある場合、技術的な問い合わせに対する回答に時間が掛かることがあります。不具合が発生した場合の対応も、日本国内の顧客が優先されないケースも実際に怒っています。

また、万一ベンダー側と裁判になった場合の管轄裁判所が、海外の裁判所と契約書に書かれている場合もあります。こうなるとよほどの大企業以外は、実質的には泣き寝入りにならざるを得ないと言えます。

加えて、LMSベンダーの本社が所在している国によっては、LMSに登録したデータがきちんと守られないリスクがあることにも注意が必要です。

LMSを比較する際に重要な機能・ポイント

LMSは20年以上の歴史を持つシステムであり、各ベンダーは長年にわたり多様な機能を開発・提供してきました。その結果、表面的な機能比較だけでは各製品間の違いを十分に見極めることが難しい状況にあります。

今回ご紹介した「LMSを選定するための機能比較リスト」を活用いただくことで、細かな項目に基づいて製品を比較し、自社のニーズに最適なLMSを選定することが可能です。一見すると手間がかかるように思えるかもしれませんが、自社に合った適切なシステムを選定するためには、必要な労力を惜しまないことが重要です。不十分な比較に基づいた選定をしてしまうと、利用開始後に社内の利用者から不満の声が挙がってくる可能性もあり、短期間で再度LMSをリプレイスし直すというような事態になってしまうと、かえって手間が増えてしまうことにもなりかねません。

「LMSを選定するための機能比較リスト」を活用して慎重に選定を行い、自社にとって最良のLMSの導入を目指しましょう!

弊社では、Qualif以外のLMSも含めて、お客様にとって最適なLMSを導入するお手伝いをさせていただいております。お気軽にご相談ください!

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