リスキリング

目次

はじめに

「DX人材を育成したいが、何から手をつければいいかわからない」 「社員に新しいスキルを身につけてほしいが、現場の抵抗感が強い」

急速なデジタル化(DX)やAIの台頭に伴い、多くの企業が「リスキリング(Reskilling)」の必要性に迫られています。しかし、単に「勉強させること」と混同され、効果的な施策になっていないケースも少なくありません。

本記事では、リスキリングの正しい定義や、よく混同される「リカレント教育」との違い、企業が導入する際の具体的な4つのステップについて、3分でわかりやすく解説します。

1. リスキリングをひとことで言うと?

リスキリング(Reskilling)とは、一言で言うと「新しい職業や業務に就くために、必要なスキルを習得させること」です。

経済産業省の定義では、「新しい職業に就くため、あるいは、今の職業で求められるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」とされています。

単なる「スキルアップ(今の業務の延長線上での向上)」とは異なり、「業務内容の転換」や「価値創出」を前提としている点が最大の特徴です。

【用語の要約】

  • 目的: DX対応、成長分野への労働移動、イノベーション創出
  • 対象: 全社員(特にミドル・シニア層や、既存業務がAIに代替される層)
  • 英語: Reskilling
  • リカレント教育との違い:
    • リカレント教育: 職を離れて大学などで学び直す(個人の主体性寄り)。
    • リスキリング: 企業に在籍したまま、業務の一環として学ぶ(企業の戦略寄り)。

2. なぜ今、リスキリングが注目されているのか

リスキリングという言葉は、2020年のダボス会議(世界経済フォーラム)で「リスキリング革命(Reskilling Revolution)」が取り上げられたことがきっかけとなり、世界的なトレンドとなりました。日本でも注目される背景には、主に3つの理由があります。

  1. DX人材の圧倒的な不足:デジタル技術を活用してビジネスを変革できる人材が足りていません。外部採用は競争が激しくコストも高いため、「社内人材の育成」にシフトせざるを得ない状況です。
  2. 労働力人口の減少:少子高齢化が進む中、新たな人を雇うことは年々難しくなっています。今いる社員に新しい武器(スキル)を持たせ、生産性を高めることが企業の生存戦略となっています。
  3. ジョブ型雇用への移行:「人」に仕事を割り当てるメンバーシップ型から、「仕事(職務)」に人を割り当てるジョブ型への移行が進み、社員一人ひとりに「専門的なスキル」が求められるようになったためです。

3. 企業が導入するメリット・デメリット

メリット

  • 採用コストの削減: 外部から高額なエンジニアなどを採用するよりも、社内人材を育成する方が、文化的なマッチングリスクも低く、長期的にはコストを抑えられます。
  • エンゲージメント向上: 「会社が自分のキャリアに投資してくれている」と感じることで、社員の帰属意識が高まります。
  • イノベーションの創出: 既存の業務知識(ドメイン知識)を持つ社員が、デジタルスキルを身につけることで、実務に即したDX(業務変革)が生まれやすくなります。

デメリット・注意点

  • 即効性がない: 新しいスキルの習得には時間がかかります。
  • 離職リスクへの懸念: 「スキルを身につけた社員が転職してしまうのでは?」という懸念です。

4. リスキリングの進め方(4ステップ)

やみくもに研修やeラーニングを実施しても、リスキリングは成功しません。以下のステップで進めることが重要です。

  1. スキルギャップの可視化(現状分析)
    経営戦略に基づき「これから必要なスキル」と「社員が現在持っているスキル」の差(ギャップ)を把握します。
  2. 学習プログラムの策定(カリキュラム設計)
    ギャップを埋めるための具体的な研修や教材を用意します。ここでは「インストラクショナルデザイン」の考え方が役立ちます。
  3. 学習の実施・伴走
    eラーニングやワークショップを実施します。重要なのは「学ぶ時間の確保」と「モチベーション維持」の仕組みづくりです。
  4. 実務での実践(配置転換・プロジェクトアサイン)
    学んで終わりではなく、そのスキルを使う新しい業務やポストを用意します。ここまでやって初めて「リスキリング」が完成します。

5. リスキリングに関するよくある質問(FAQ)

  • Q1. 「リスキリング」と「リカレント教育」の最大の違いは何ですか?
    A. 学ぶ「主体」と「就業状態」の違いです。リカレント教育は「個人」が「休職・退職」して大学や大学院等で学ぶニュアンスが強いですが、リスキリングは「企業」が「働きながら」学ばせる、業務命令に近いニュアンスがあります。
  • Q2. 何から学ばせるのが良いですか?
    A. 一般的には「ITリテラシー」「データ分析」などのデジタル領域から入る企業が多いです。しかし、本来は「自社の経営課題を解決するスキル」であるべきなので、企業ごとに正解は異なります。
  • Q3. ミドル・シニア層(ベテラン)でもリスキリングは可能ですか?
    A. 可能です。むしろ、豊富な業務知識を持つベテランこそ、デジタルツールという武器を持つことで大きな成果を出せる可能性があります。ただし、「なぜ今学ぶ必要があるのか」という動機づけ(マインドセット変革)が若手以上に重要になります。

6. 成功のカギは「自社に合ったコンテンツ」と「仕組み化」

リスキリングの失敗例で最も多いのが、「汎用的なeラーニングの動画教材を見放題で提供したけれど、誰も受講してくれない」というパターンです。 社員は「今の業務で忙しい」ため、自分に関係のない一般的な内容では学習意欲が続きません。

成功させるためには、「自社の業務に直結した教材(カスタムコンテンツ)」と、「学習履歴を管理し、評価につなげる仕組み(LMS)」のセットが必要です。

クオークでは、汎用的な教材だけでなく、貴社の業務マニュアルや独自のノウハウを反映したリスキリング教材の制作を支援しています。また、学習の進捗を可視化するLMSの導入・運用もサポートします。

7. まとめ

  • リスキリングとは、新しい業務に就くために必要なスキルを習得させること(=変革への投資)。
  • リカレント教育(個人の学び直し)とは異なり、企業の経営戦略と密接に関わっている。
  • 成功には「スキルの可視化」と「実務での活用機会」のセットが必要不可欠。

▼ 次のアクション 「社内向けのリスキリング教材を作りたい」「社員の学習データを管理したい」とお考えのご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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