はじめに:学習定着度を決定づける「補助教材」の重要性
教材コンテンツの制作において、メインの講義やスライドだけでは真の教育効果を最大限に引き出すことは難しいものです。学習者が知識を深く理解し、実務レベルで定着させるには、小テストやワークシートといった補助教材が極めて重要です。
私はインストラクショナルデザインの専門家として、「ARCS動機付けモデル」(Keller, 1987)や「ブルームのタキソノミー」(Bloom, 1956)などの教育工学理論を実践的に取り入れ、補助教材の設計に反映させています。
本記事では、小テストやワークシートなどの補助教材をAIを用いて迅速かつ高品質に作成する具体的な方法と、その教育的価値について解説します。(執筆者:エデュニア株式会社 代表取締役 千葉佑介)
本シリーズの構成
本記事は全10本シリーズの6本目です。ぜひシリーズ全体を通してお読みください。
- 第1回:生成AIで教育コンテンツ制作が劇的に変わる!最新プロセス徹底解説
- 第2回:テーマ選定とリサーチを効率化する|AIを活用した効果的な情報収集術
- 第3回:プロレベルのコンセプト設計を実現|NottaAI+ChatGPTで思い通りのコンテンツ設計を
- 第4回:教材制作の要|ChatGPTで作る効果的なカリキュラム設計のポイント
- 第5回:スライド&ナレーション原稿|GammaとChatGPTでプロ級の教材を作る方法
- (本記事)第6回:学習効果を最大化する|小テスト・補助教材・プロモーション資料作成テクニック
- 第7回:低コストで高品質な動画教材を実現|生成AI活用の動画制作ノウハウ
- 第8回:失敗事例に学ぶ|生成AIコンテンツ制作で注意すべき5つの落とし穴
- 第9回:実際の導入事例を徹底解剖|AI教材制作で成功した企業・学校の共通点とは?
- 第10回:生成AIを活用した教材制作をあなたの現場へ|導入ロードマップとエデュニアの支援内容
セクション1:教育効果を高める補助教材の重要性と理論的背景
教育工学の観点から、学習効果を最大化するには以下の3つの要素が欠かせません。
- 振り返り(Reflection):学習内容を復習し、自身の理解度を確認する機会を提供する
- 練習(Practice):獲得した知識を実際に活用・応用する練習の場を設ける
- フィードバック(Feedback):誤りを正し、自己調整を促す適切なフィードバックを与える
こうした要素を満たすためには、小テストやワークシート、補助資料などのサポートツールが必須です。特に「ブルームのタキソノミー」(Bloom, 1956)においては、「理解(Comprehension)」から「応用(Application)」へと進む段階を補助教材がサポートする重要性が強調されています。
しかし現実には、本編の教材作成に時間が割かれ、小テストなどの補助教材作成が不十分になるケースが散見されます。この課題に対し、AIを駆使することで効率よく補助教材を開発する方法を次に紹介します。
セクション2:AIを活用した小テスト・ワークシートの迅速な作成方法
① 小テスト作成におけるChatGPTの活用法
ChatGPTを使えば、小テスト問題を迅速に生成できます。以下はその具体的プロンプト例です。
「次の内容をもとに、学習理解度を確認するための4択問題を3問作成し、それぞれの選択肢に正解・不正解の理由を200字程度で記述してください。内容:『ファシリテーションは、会議やワークショップを円滑に進め、参加者の意見を引き出しながら目的達成を支援するスキルである』」
こうしたプロンプトをChatGPTに入力すると、即座に高精度な小テスト問題が生成されます。その後、人間が教育工学の観点から最終調整を行い、迅速に質の高い問題を完成できます。

② ワークシート作成のためのAI活用法
ワークシートもAI活用により劇的に効率化できます。例えば、次のプロンプトを使用します。
「『プレゼンテーションスキルを向上させるための構成方法(PREP法)』について、学習者が自身の職場で具体的に実践できるワークシートを作成してください」
これで生成されたアウトラインをベースに、人間が微調整を加え、即座に使える実践的なワークシートを完成させられます。

セクション3:プロモーション資料の効率的作成(ChatGPT活用)
教材の教育効果を十分に発揮するためには、受講生の関心や学習意欲を高めるプロモーション資料が不可欠です。ここでもAI技術が大きな役割を果たします。具体的な作成方法を詳しく解説しましょう。
プロモーション資料作成における効果的なChatGPT活用方法
教材のプロモーション資料(パンフレット、ウェブページの紹介文など)をChatGPTで迅速に作成するプロセスを具体的に解説します。


Step1:的確なプロンプト設計
まずChatGPTに入力するプロンプトを工夫します。
プロンプト例:「以下の教材概要をもとに、このコースを購入するメリットや受講対象者に対する魅力を伝える500字程度のプロモーションテキストを作成してください。『マネジメント初心者向けのチームビルディング講座。受講後はチームの結束力を向上させるスキルが身につきます。』」
Step2:生成テキストのブラッシュアップ
生成されたテキストに対して以下の観点で修正を加えます。
- ターゲットの明確化:特定の対象層(例:マネジメント初心者や新任リーダー)への訴求を明確にする
- ベネフィットの具体化:受講後に得られる具体的な成果を明確に示す
- 簡潔かつ魅力的な表現に編集:冗長な表現を削り、読みやすさと魅力を高める
こうしたプロセスを経て、わずか数分~十数分で実際の販促活動に活用できる高品質なプロモーション資料が完成します。
なぜAI活用でプロモーション資料作成が有効なのか
AIを用いる最大のメリットは、時間の大幅な短縮と質の均質化にあります。人間がゼロから文章を考える場合、多くの時間を要し、クオリティにばらつきが生じやすいです。AIが示す初稿を土台に人間が編集を加えるスタイルを取ることで、資料作成にかかる時間が劇的に短縮され、品質も向上します。
教育工学に関する参考文献一覧
以下、今回の内容の理論的根拠として用いた主な文献を示します。
- Bloom, B. S. (1956). Taxonomy of educational objectives: The classification of educational goals. Handbook I: Cognitive domain. New York: David McKay Company.
(ブルームのタキソノミー:学習目標を認知領域のレベルに応じて分類する方法) - Keller, J. M. (1987). Development and use of the ARCS model of instructional design. Journal of Instructional Development, 10(3), 2-10.
(ARCS動機付けモデル:学習者の動機付けを高めるためのインストラクショナルデザインモデル) - Merrill, M. D. (2002). First principles of instruction. Educational Technology Research and Development, 50(3), 43-59.
(メリルの第一原理:効果的なインストラクション設計の基本原理を提示した理論) - Clark, R. C., & Mayer, R. E. (2016). E-Learning and the science of instruction: Proven guidelines for consumers and designers of multimedia learning (4th ed.). John Wiley & Sons.
(Eラーニング教材設計に関する科学的根拠と実践的指針)
おわりに:補助教材を最大限活用して教育成果を高めませんか?
エデュニア株式会社では、インストラクショナルデザインの知見とAI技術を融合させ、皆さまの教材作成を強力にサポートしています。教育効果を劇的に高める補助教材の設計をお考えの際は、ぜひご相談ください。下記のリンク先からクオークさん宛にお問い合わせをいただけましたらお返事を差し上げます。
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著者プロフィール
千葉 佑介(ちば ゆうすけ)

エデュニア株式会社代表取締役、H&Sホールディングス株式会社最高執行責任者(「ぼくのAIアカデミー事業担当」)を勤める傍ら、岩手県立大学ソフトウェア情報学研究科博士後期課程で製造業における教育サービスのDX関連の研究に従事。
熊本大学人文社会科学研究科教授システム学専攻博士後期課程卒。富士通株式会社で大学ビジネス営業企画と事業企画に携わった後、DMG森精機と野村総合研究所の合弁組織であるテクニウム株式会社にてDX教育サービスを立上げ、経済産業省補助事業「デジタルものづくり実践講座」のプロジェクトディレクターを務めた。
その後、AIリテラシーや生成AI活用に関する講座やワークショップを多数実施すると共に、生成AIと教育工学を駆使した教材制作および教育事業のDXコンサルティングに奔走中。