オーサリングツール(Authoring Tool)

目次

はじめに

「研修費を削減するために、eラーニング教材を自分たち(社内)で作りたい」
「PowerPointの資料はあるけれど、これをどうやってeラーニングにすればいいの?」
「外注すると修正のたびにお金と時間がかかる。ちょっとした変更なら自分たちでやりたい」

eラーニングの普及に伴い、教材をすべて制作会社に外注するのではなく、一部を内製化しようとする動きが加速しています。その際に必ず必要となるソフトウェアが、「オーサリングツール(教材作成ソフト)」です。

しかし、市場には「iSpring」や「Articulate Storyline」「Adobe Captivate」など多くのツールが溢れており、自社に合ったものを選定するのは容易ではありません。本記事では、オーサリングツールの役割や、主要な3つのタイプ、そして「ツールを買ったけれど使いこなせない」という事態を防ぐための選定基準について解説します。

1.オーサリングツールをひとことで言うと?

オーサリングツール(Authoring Tool)とは、一言で言うと「文字・画像・音声・動画などの素材を組み合わせて、eラーニング教材(SCORMなどの標準規格に準拠)として書き出すためのソフトウェア」のことです。

「Author(著者・作者)」が語源であり、「コンテンツを構築する道具」という意味です。料理に例えるなら、「食材(パワポや動画)」を「料理(eラーニング教材)」に加工するための「調理器具(オーサリングツール)」にあたります。

これを使わずにeラーニングを作るには、プログラミングコード(HTML5やJavaScript)を一から書く必要がありますが、オーサリングツールを使えば、専門知識がない人事担当者でも、クリック操作だけでインタラクティブな教材を作成できます。

【用語の要約】

  • 目的:eラーニング教材の制作・編集・SCORM書き出し
  • 対象:企業の教育担当者、教材制作会社
  • 英語:Authoring Tool
  • 代表的な製品:iSpring Suite、Articulate Storyline、Adobe Captivate、Vyond

2.なぜ「PowerPoint」だけではダメなのか

「パワポで作った資料ならあるんだけど、そのまま配るのではダメなの?」よくある質問ですが、PowerPointファイルをそのまま配布するのと、オーサリングツールでeラーニング化するのとでは、以下の3点で決定的な違いがあります。

①「学習履歴」が取れるか(SCORM対応)
ただのPPTファイルやPDFを配っても、管理者は「誰が、いつ、どこまで読んだか」を知る術がありません。オーサリングツールを使うと、教材を「SCORM(スコーム)」という形式に変換できます。これにより、LMS(学習管理システム)と連携し、「進捗率80%」「テスト90点」といった詳細なデータを管理できるようになります。

②「インタラクティブ(双方向)」な体験
PPTは基本的に「読むだけ」の一方通行です。オーサリングツールを使えば、「クイズを出題して、正解なら音を鳴らす」「クリックすると詳細な解説がポップアップする」「間違えた人だけ復習ページに飛ばす」といった、受講者が能動的に参加する仕掛け(インタラクション)を組み込めます。

③マルチデバイス対応(スマホ対応)
PPTはスマホの小さな画面では見づらいですが、オーサリングツールで「HTML5」形式に書き出せば、PC、タブレット、スマホ、どんな端末でもレイアウトが崩れずに閲覧できるレスポンシブな教材になります。

3.主要な3つのタイプと代表的ツール

オーサリングツールは、その構造によって大きく3つのタイプに分類されます。自社のスキルレベルに合わせて選ぶことが重要です。

タイプ①:PowerPointアドイン型(初心者~中級者向け)

普段使っているPowerPointに「機能追加(アドイン)」して使うタイプです。

  • 代表製品:iSpring Suite(アイスプリング)
  • 特徴:パワポのメニューバーに「iSpring」というタブが増えます。パワポでスライドを作り、そのタブから「音声合成」や「クイズ作成」を行い、最後に「パブリッシュ(書き出し)」ボタンを押すだけです。
  • メリット:新しいソフトの操作を覚える必要がなく、学習コストがほぼゼロです。既存のパワポ資料資産をそのまま流用できます。
  • デメリット:パワポの表現力の限界を超えた複雑な動き(ゲームのような挙動)は作れません。

タイプ②:スタンドアロン型(プロ~上級者向け)

PowerPointとは独立した、専用のソフトウェアをインストールして使うタイプです。

  • 代表製品:Articulate Storyline 360(アーティキュレート・ストーリーライン)、Adobe Captivate
  • 特徴:自由度が極めて高く、プロの制作会社がメインで使用しています。「変数を管理する(HPゲージを作るなど)」「複雑な分岐シナリオを作る」といった高度なことができます。
  • メリット:「いかにもスライド」ではない、リッチで動きのある教材が作れます。
  • デメリット:操作が難しく、習得に時間がかかります。また、ライセンス料が高額になる傾向があります。

タイプ③:クラウド型(アニメーション特化など)

PCにインストールせず、Webブラウザ上で編集するタイプです。

  • 代表製品:Vyond(ビヨンド)、Video Scribe
  • 特徴:特に近年人気なのが、ビジネスアニメーション作成ツールのVyondです。用意されたキャラクターや背景を選ぶだけで、直感的にアニメ動画が作れます。
  • メリット:誰が作っても一定以上のクオリティに見える「プロっぽい」アニメが作れます。共同編集もしやすいです。
  • デメリット:SCORM書き出し機能がない場合が多く(MP4出力のみ)、別途SCORM化の作業が必要になることがあります。

4.「内製」か「外注」か?判断の分かれ目

ツールを導入すれば、全て内製化できるわけではありません。「ここは自分たちでやる」「ここはプロに頼む」という線引きが重要です。

内製化に向いている教材

  • 情報の鮮度が命の教材:製品情報やキャンペーン情報など、すぐにリリースし、頻繁に更新が必要なもの。
  • 社外秘の情報を含む教材:外部に出せない機密情報を含む業務マニュアルなど。
  • 質より量が求められる教材:完璧なデザインでなくてもいいから、とにかく数を揃えたいマイクロラーニングなど。

外注すべき教材

  • 全社的なコンプライアンス教材:全社員が受講するため、高いクオリティと「飽きさせない演出(ドラマ仕立てなど)」が必要なもの。
  • システム操作シミュレーション:複雑なITツールの操作訓練など、高度な技術が必要なもの。
  • ブランディングに関わる教材:採用向けコンテンツなど、会社の顔となるもの。

「iSpring」のような簡易ツールで日常的な教材は内製し、ここぞという大型研修教材だけ外注する、というハイブリッド運用が最もコストパフォーマンスが良いです。

5.オーサリングツール選びの失敗例(FAQ)

  • Q1.海外製ツールばかりですが、日本語対応は大丈夫ですか?
    • A.iSpringやArticulateなどのツールは日本語化されていますが、サポート窓口やマニュアルの充実度は代理店によります。購入の際は「日本の正規代理店経由」で購入し、日本語でのサポートが受けられるか確認することを強くおすすめします。
  • Q2.Macでも使えますか?
    • A.要注意です。iSpringやStorylineなどの主要ツールはWindows専用であることが多いです。Mac環境の企業は、ParallelsなどでWindows環境を作るか、Mac対応のクラウド型ツールを探す必要があります。
  • Q3。作った教材を修正したいのですが、ツールを解約した後でも修正できますか?
    • A.できません。修正して再度書き出すには、ライセンス契約が有効である必要があります。担当者が退職してライセンスが切れた途端、教材が「ブラックボックス化(修正不能)」するトラブルが多発しています。ソースファイルの管理ルールは厳格に決めておく必要があります。

6.成功のカギは「ツール導入」と「シナリオ設計」のセット

ツールを買えば、明日から素晴らしい教材が作れるわけではありません。「包丁」を買っても、料理の腕がなければ美味しい料理が作れないのと同じです。

オーサリングツールはあくまで「組み立てる道具」です。その前段階にある「インストラクショナルデザイン(構成・シナリオ)」がしっかりしていなければ、いくら動く教材を作っても、学習効果は上がりません。

クオークでは、以下の3段階で内製化を支援します。

  1. ツール選定・販売:貴社のスキルと目的に合ったツール(iSpring等)をご提案・販売します。
  2. 操作トレーニング:単なるマニュアル説明ではなく、「こういう教材を作りたいならこう使う」という実践的なハンズオン研修を行います。
  3. テンプレート制作:素人が作るとデザインが崩れがちです。プロが「貴社専用のデザインテンプレート(表紙、本文、クイズ画面)」を作成し、あとは文字を入れ替えるだけの状態にして納品します。

「ツールを買ったけど宝の持ち腐れになっている」という企業様は、ぜひ一度ご相談ください。

7.まとめ

  • オーサリングツールとは、素材を組み立てて「SCORM対応のeラーニング教材」にするためのソフト。
  • 「PowerPointアドイン型(iSpring)」は初心者でも使いやすく、「スタンドアロン型(Storyline)」はプロ並みの表現が可能。
  • ツール導入だけでなく、シナリオ設計(ID)のスキルとセットで運用することが内製化成功の鍵。

▼次のアクション「自社に最適なオーサリングツールを知りたい」「iSpringのデモを見てみたい」とお考えのご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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