「日本におけるeラーニングの歴史」~eラーニングの現在地を知るために歴史を振り返る ~

あなたはeラーニングがいつ始まったかご存知ですか?私たちの働き方や学び方が大きく変化する中で、「eラーニング」という言葉はすっかり身近な存在になりました。スマートフォンで資格取得講座を受け、動画でスキルを習得し、LMS(Learning Management System:学習管理システム)を使って社員教育を管理する、こうした光景は、もはや特別なものではありません。

しかし、この「当たり前」に至るまでには、さまざまな技術革新、社会的背景、政策的な後押し、そして数多くの企業・教育現場の試行錯誤がありました。

では、なぜ今あらためてeラーニングの歴史を振り返る必要があるのでしょうか?

それは、eラーニングが単なる「学習手段」ではなく、人材育成の文化そのものを変える力を持っているからと考えています。そして、その力がどのように育まれ、どのような壁に直面し、どのような転機を経て今に至るのかという歴史を知ることで、これからの導入・活用のヒントが見えてくるはずです。

本記事では、CBT(Computer Based Training)に始まり、2000年のeラーニング元年、EdTechという国策への転換期を経て、今日のLMS(Learning Management System)の進化に至るまで、日本におけるeラーニングの歴史をたどります。

教育の未来を考えるすべてのリーダーの方にとって、ぜひ一度は押さえておきたい内容です。

目次

CBTとは?eラーニングの前身を解説(1980〜90年代)

歴史の始まりは、1980年代後半にまでさかのぼります。eラーニングという言葉が一般化する以前、日本企業の教育現場では「CBT(Computer Based Training)」という、コンピューターを用いた学習が先行していました。

1980年代後半から1990年代にかけて、オフィスはOA(Office Automation)化が推進され、パソコンの普及が一気に進みました。中でも1995年に登場したWindows 95は、誰もがパソコンを使う世の中になるという歴史的な出来事でした。

この時代の教育は、Windows 95パソコンに搭載されたCD-ROMやフロッピーディスクに収録された教材を使い、専用端末やPC上で個別に学習を進めるスタイルが主流でした。インターネットが未発達であったため、ネットワークによる学習管理は存在せず、CD-ROMなどのスタンドアロン型が中心でした。CBTにおける教材も「静止画+テキスト中心」で、教育効果は限定的でした。

インターネット普及とeラーニング元年(2000年代)

2000年は「eラーニング元年」と呼ばれる象徴的な年です。インターネットの商用利用が本格化し、企業の教育現場でも「Webベースの学習(WBT:Web Based Training))」が現実味を帯びてきました。これをけん引したのはインターネットのブロードバンド化です。サービスプロバイダーが競い合って高速・大容量回線を低価格で提供し、従来のダイアルアップ接続とは比べ物にならない速さでインターネットへ接続できるようになりました。結果として、学習コンテンツの再生はCD-ROMから、ネット接続へ変わっていきました。

学習コンテンツがネット接続型になると、サーバー上にある学習コンテンツを更新するだけで、教材を最新化できるので、サービス提供事業者の生産性も上がり、受講者にとってもネット接続さえあれば最新の教材で学べるようになりました。

当時、矢野経済研究所によると、2000年のBtoB向けeラーニング市場規模は130億円。その後、2005年には2,100億円にまで拡大するという予測がなされ、LMSベンダーをはじめとして教育業界は沸き立ちました。

2003年には、eラーニングブームが到来。日本最大級の展示会「eラーニングワールド」には27,000人以上が来場し、eラーニング市場は期待と注目を集めていました。

この頃、多くの企業や研修機関がLMS(学習管理システム)を導入し始め、過去問演習や業務知識の習得をオンラインで行うスタイルが徐々に普及。しかしその一方で、動画配信インフラや通信環境の未整備、コンテンツの質・量の不足など、eラーニング導入後の壁も顕在化していきます。

また、2000年には、eラーニングの標準化を目指してSCORM (Sharable Content Object Reference Model:スコーム)が登場しました。SCORMとは、LMSとeラーニングコンテンツとの間でeラーニング受講の進捗状況のデータ(学習のステータス、確認テストの得点、アンケートの回答内容など)を正確にやりとりする方法を取り決めた国際的な標準規格です。

異なるLMS間でもコンテンツを共通利用できる仕組みとして、企業や教育機関に急速に普及していきました。効率的な学習管理が可能になり、eラーニングの普及を後押ししました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

「いまさら聞けないSCORMとは?」~eラーニングの標準規格の現状と今後~ – Qualif eラーニングラボ

「eラーニング暗黒の時代」(2007年〜2012年)

華々しかったブームも長くは続かず、2007年から2012年にかけては「eラーニング暗黒時代」と呼ばれる停滞期に突入します。2010年にはeラーニングワールドの入場者が1万人を下回り、2011年にはイベント自体が中止となります。

企業の中では、老朽化したeラーニングのシステムを更新する動きはあったものの、新規導入は鈍化。また、投資対効果が無いと判断し、eラーニング事業から撤退するベンダーも相次ぎました。

また、受講者の利便性や企業側の教育効果への意識が低かったことが課題として浮き彫りになりました。

さて、2009年は「モバイルラーニング元年」と呼ばれています。2007年にiPhone、2008年にAndroidが登場し、スマートフォンの急速な普及が始まりました。これにより、PC前提だったeラーニングは「いつでもどこでも学べる」という本来の理想に近づき始めます。

暗黒期から再興へ:スマホ時代とEdTech(2013年~)

そして2013年、日本では「EdTech元年」と呼ばれる革新の年を迎えます(EdTech=Education × Technology)。アメリカではすでに、KHANACADEMY や Coursera、Udemy、KNEWTON といったプラットフォームが登場し、学校教育やリスキリング市場をITで変えるという潮流が加速していました。元々アメリカでは「学校教育をITで変えていこう」という文脈からスタートしたこともあり、多くのEdTechベンチャーが成長を遂げていました。

この波が日本にも波及し、2013年頃から教育分野を中心に多くのEdTechサービスが誕生します。この年は日本においてEdTechが一気に注目され始めた年であり、教育のデジタル化が本格的に始動した転換点でした。特に学校教育分野では、ICT教育の導入が進み、動画教材や個別最適化学習、オンライン指導などが注目されるようになりました。

また、社会人教育の分野でも、「リスキリング」や「学び直し」が政策的に後押しされ始める前段階として、eラーニングの再評価が始まったのもこの時期です。

国がEdTechを国策に─eラーニング推進を加速(2017年〜)

2017年以降、日本政府がEdTechを国家的な成長分野と位置づけ、社会人教育や企業研修のデジタル化を積極的に支援し始めたことも、LMS普及の大きな追い風となっています。

このように、国の政策が追い風となったことで、LMSを活用した研修の重要性はますます高まってきました。

2018年は、マイクロラーニング元年と呼ばれています。

それまでのeラーニングは「PCで学ぶもの」でしたが、スマートデバイスの普及により、移動中でも現場でも学べる環境が整いつつあったことが大きな転機となりました。

スマートフォンやタブレットによって学習ができるため、休憩時間や移動時間などのスキマ時間を使った学習が可能です。結果として「いつでも・どこでも学習」がより現実的になりました。学習者のすそ野が広がってことで注目されたのは、直感的な操作性や起動時間の短さです。「使いやすさ」「ユーザービリティ」向上への取り組みを経て、企業研修だけでなく、学校や塾・予備校などでもeラーニングが活用され始めました。

これらのスタイルは「モバイルラーニング」と呼ばれることもあり、スマートフォンでの学習を前提とした「スマホファースト」で設計されたeラーニングも登場してきました。なお、従来型のeラーニングのコンテンツは、講師が長時間説明して単調になり、途中離脱が多いことが課題でした。こうした課題を解決する形で登場したのが「マイクロラーニング」です。

マイクロラーニングは「短時間で効率よく学べる研修手法」です。1回あたりの学習時間が非常に短く、3〜5分程度の動画で構成されます。まとまった時間が取りにくいビジネスパーソンでも、通勤中や業務のスキマ時間に手軽に学習でき注目されるようになりました。

また、 それまではeラーニングの導入には専用サーバーや大規模な開発が必要でした。しかし、2018年頃からは次のようなLMSの進化が進みます。

  • クラウド型LMSの台頭(自社での保有が不要で簡単に利用可能に)
  • 月額制・ID課金などで初期費用ゼロも可能なサービスの登場
  • システムが使いやすく、現場の研修担当者でも運用可能

これにより、中堅・中小企業でもeラーニングの導入が比較的容易になりました。

コロナ禍がもたらしたeラーニング再評価(2020年〜)

そして2020年、新型コロナウイルスの拡大によって集合研修が困難となり、企業や団体は急速にeラーニング環境の整備を進めることになりました。

この「強制的なDX(デジタルトランスフォーメーション)」の中で、以下のニーズが急浮上しました。

  • 動画教材の整備とオンデマンド配信の需要増
  • オンライン試験や模擬テストの導入
  • ブレンディッド(対面+オンライン)研修の構築
  • 助成金対象となるLMS活用の加速

なかでも、人材開発支援助成金や事業展開等リスキリング支援コースの対象となるLMSのニーズは急増。証跡が取れ、進捗管理・受講履歴が一元化できるLMSの導入が加速しました。

人材開発支援助成金については下記に詳しく記載しています!

【令和7年度/2025年度最新版】人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コースを活用したeラーニングビジネスの立ち上げ方 – Qualif eラーニングラボ

2025年4月22日に、矢野経済研究所より最新の「国内eラーニング市場調査結果(2025年版)」が発表されました。

2024年度の国内eラーニング市場はBtoB分野が堅調な成長を見せ、前年度比7.8%増の1,232億円に到達しました。当レポートにも、BtoBのeラーニング市場は「引き続き高いニーズを保ちつつ、市場の拡大が続く」が、「競争の激化等で市場成長率は抑制傾向で推移」と書かれています。

詳しくは下記記事をご参照ください!

【2025年最新】国内eラーニング市場はBtoBが主導へ 矢野経済研究所レポートから未来予測を読み解く – Qualif eラーニングラボ

eラーニングの進化とともに、LMSのアップデートを

日本のeラーニングは、CBTの時代から始まり、ネット・クラウド・EdTechといった潮流の中で、大きく変化してきた歴史があります。そして今、動画やデータ活用、リスキリング支援といった新たなニーズに応える形で、LMSもまた進化を続けています。

時代に合った教育を実現するためには、LMSもアップデートが必要です。過去に導入したままのLMSを放置していませんか? 今こそ、貴社の教育戦略を次のステージに導く「学習基盤」として、時代に合ったLMSを見直す時期かもしれません。

弊社で新しいeラーニングプラットフォーム「クオリフ」の開発を進めているのは、LMSの進化が止まってしまっているという現状を打破したいと考えているからです。20年以上にわたってeラーニングに取り組んできたクオークのメンバーの知見を活かして、以下のような特徴を持つLMSを開発しています。

  • 社員の学習を「管理」するという発想の逆を行く
  • 学ぶべき知は現場にこそある
  • 学習の成果が出る
  • LMS上での作業を徹底的に自動化する

eラーニングは歴史的に見てこの四半世紀である程度の普及を果たしましたが、この先もユーザを獲得し利用し続けてもらうには、eラーニング自体が進化していく必要があります。開発努力を怠るLMSベンダーやコンテンツベンダーは、やがて確実に淘汰されていくでしょう。開発の進捗などは随時公開していきます。どうぞご期待ください。
eラーニングの課題や要望に応じたご提案・無料デモも承っております。

Qualif(クオリフ)は、「オンライン学習+講座販売」に必要なeラーニングのすべてが揃うLMSです

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