はじめに
「研修を企画しても、毎回やりっぱなしになってしまう」
「教材を作ったが、本当に効果があったのか検証できていない」
人材育成の現場では、このような「PDCAが回らない」悩みが尽きません。 そこで役立つのが、教育プログラム開発の世界標準フレームワークである「ADDIE(アディー)モデル」です。
本記事では、研修の品質を確実に高めるための5つのステップ(分析・設計・開発・実施・評価)について、具体的な進め方をわかりやすく解説します。
1. ADDIEモデルをひとことで言うと?
ADDIE(アディー)モデルとは、教育研修プログラムを開発・運用するための「5段階のシステム的なプロセス」のことです。
以下の5つの英単語の頭文字を取って名付けられました。
- Analysis(分析)
- Design(設計)
- Development(開発)
- Implementation(実施)
- Evaluation(評価)
このプロセスを順に踏むことで、勘や経験に頼らず、論理的かつ効果的な教育コースを作成することができます。
【用語の要約】
- 目的:研修開発の品質管理、継続的な改善(PDCA)
- 対象:インストラクショナル・デザイナー、研修担当者
- 英語:ADDIE Model
- 特徴:「作って終わり」ではなく、「評価」が次の「分析」につながる循環型のモデルである点。
2. なぜ今、ADDIEモデルが必要なのか
かつては、カリスマ講師の力量に依存した「一発勝負」の研修が主流でした。しかし、eラーニングや動画教材が普及した現代では、以下の理由からシステム的な設計が不可欠になっています。
- 手戻りの防止:
いきなり教材を作り始めてから「内容が現場のニーズと違う」と気づくと、修正に膨大なコストがかかります。最初の「分析・設計」を重視するADDIEモデルは、このリスクを最小化します。 - 教育効果の可視化:
「E(評価)」のプロセスが組み込まれているため、「なんとなく実施した」ではなく、データに基づいた効果測定が可能になります。 - 品質の標準化:
担当者が変わっても、このプロセスに沿っていれば一定品質の研修を継続して提供できます。
3. 導入のメリット・デメリット
メリット
- 「誰に何を教えるか」がブレない: 最初の分析フェーズでゴールを固めるため、的確な研修になります。
- 改善のサイクルが回る: 評価結果を次回の分析に活かせるため、やるたびに研修の質が向上します。
デメリット・注意点
- スピード感への懸念: 分析や設計に時間をかけるため、「明日までに資料を作って」というような突貫工事の案件には不向きです(その場合は、アジャイル型の開発手法を用いることもあります)。
4. 実践!ADDIEモデルの5つのステップ
では、具体的にどのように進めればよいのでしょうか。各フェーズのポイントを解説します。

① Analysis(分析)
最も重要で、最も省略されがちなフェーズです。
- 現状分析:現場で何が起きているか?(例:営業成績が落ちている)
- 課題特定:その原因は「知識不足」か? それとも「環境」か?
- 対象者分析:受講者のレベルや前提知識は?
- ゴール設定:研修後、受講者が「何ができるようになれば成功か」を定義します。
② Design(設計)
分析結果をもとに、研修の「設計図」を描きます。
- カリキュラム構成:章立てや順序を決定します。
- 評価方法の決定:テストを行うか? レポートか? 合格基準は?
- メディア選定:集合研修にするか、eラーニング(動画)にするか、ハイブリッドか?
③ Development(開発)
設計図に従って、実際に教材を作ります。
- スライド、テキスト、動画の制作。
- LMS(学習管理システム)への搭載準備。
- ※ここでは「設計図通りに作れているか」を常に確認します。
④ Implementation(実施)
研修を実際に提供します。
- 受講案内、動機づけ(なぜこの研修が必要か伝える)。
- LMSでの配信管理、進捗のフォロー。
- トラブル対応などの学習支援。
⑤ Evaluation(評価)
研修の効果を測定します。
- 形成的評価:開発途中で行うチェック(分かりにくい点はないか?)。
- 総括的評価:研修終了後のアンケート、テスト結果、現場での行動変容の調査。
- ここでの気づきを、次の「①分析」へとフィードバックします。
5. ADDIEモデルに関するよくある質問(FAQ)
- Q1. 中小企業でもこのモデルを使う必要がありますか?
- A. はい。規模に関わらず、「分析(誰に何のために)」と「評価(うまくいったか)」を意識するだけで、研修のムダを大幅に減らせます。厳密に運用しなくても、思考のフレームワークとして有効です。
- A. はい。規模に関わらず、「分析(誰に何のために)」と「評価(うまくいったか)」を意識するだけで、研修のムダを大幅に減らせます。厳密に運用しなくても、思考のフレームワークとして有効です。
- Q2. 「Analysis(分析)」は何をすればいいですか?
- A. まずは「現場のハイパフォーマーへのヒアリング」が有効です。成果を出している人と、そうでない人の差(ギャップ)がどこにあるかを探ることで、教えるべき内容が見えてきます。
- Q3. 毎回すべてのステップを踏むのは大変なのですが…。
- A. スピードが求められる場合は、プロトタイプ(試作品)を早めに作って修正を繰り返す「SAMモデル(Successive Approximation Model:アジャイル的に進めるモデル)」という手法もあります。しかし、基礎となるのはやはりADDIEモデルの考え方です。
6. 運用のカギは「分析の精度」と「LMSの活用」
ADDIEモデルの成功の鍵は、最初の「分析」と最後の「評価」にあります。しかし、多忙な人事担当者にとって、詳細な分析や、受講データの集計・評価を手作業で行うのは困難です。そのような場合は、プロの知見とツールを活用しましょう。
クオークの「eラーニングラボ」では、ADDIEモデルに基づいた「成果の出る教材設計」のコンサルティングを行っています。また、評価フェーズを自動化・効率化するためのLMS(学習管理システム)の導入も支援可能です。 「作ったけれど見られない研修」から脱却し、組織の成長につながる仕組みを作りましょう。
7. まとめ
- ADDIEモデルとは、分析・設計・開発・実施・評価の5段階で進める教育開発プロセスである。
- いきなり作り始めるのではなく、「Analysis(分析)」でゴールを明確にすることが最重要。
- 「Evaluation(評価)」の結果を次の改善につなげることで、研修の質は高まり続ける。
▼ 次のアクション 自社の研修開発プロセスを見直したい、ADDIEモデルに基づいた効果的なeラーニングを作りたいご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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