はじめに
「一生懸命説明したのに、相手の反応が薄く、『で、いくらかかるの?』と細かい話ばかりされて、企画の本来の価値が伝わらなかった」
「オンライン会議で画面共有して話していると、相手の反応が見えず、自分だけが一方的に喋って終わってしまった」
「あの人のプレゼンは、資料はキレイなんだけど、なぜか記憶に残らない」
ビジネスにおいて、プレゼンテーションは「特別なイベント」ではありません。顧客への提案、上司への報告、朝礼でのスピーチ、部下への方針説明…誰かに何かを伝え、納得してもらい、動いてもらう行為はすべてプレゼンテーションです。
しかし、多くのビジネスパーソンは「正しいプレゼンの型」を習っておらず、「自己流の資料作成」と「度胸頼みのトーク」で乗り切ろうとしています。
特に、リモートワークが普及し、相手の表情が読み取りにくいオンライン環境下では、従来の「熱意」や「空気感」だけでは通用しなくなりました。さらに、AIが綺麗なスライドを一瞬で作れるようになった今、人間には「AIには描けない『物語』を語る力」が求められています。
「伝える(Speak)」のではなく「伝わる(Reach)」へ。そして「動かす(Move)」へ。本記事では、聞き手の心を掴み、確実に行動変容を起こすための「構成・資料・デリバリー」の3大技術について解説します。
1.プレゼンテーション研修をひとことで言うと?
プレゼンテーション研修とは、一言で言うと「聞き手のニーズを理解し、論理と感情に訴えかけるストーリーを構築し、相手に『Yes(承認・購入・協力)』と言わせるための『合意形成スキル』を習得するトレーニング」のことです。
よくある誤解が、「流暢に喋る練習(アナウンサー的なスキル)」だと思われることです。しかし、ビジネスプレゼンのゴールは「上手に話すこと」ではありません。「相手に行動してもらうこと」です。どんなに噛んでも、たどたどしくても、相手が「よし、やってみよう」と思えば、それは100点のプレゼンです。
研修では、以下の3要素を総合的に鍛えます。
- コンテンツ(構成):
誰に、何を、何のために伝えるか(ロジカルシンキング+ストーリーテリング)。 - ビジュアル(資料):
認知負荷を下げ、直感的に伝わるスライドデザイン。 - デリバリー(伝達):
声のトーン、間、表情、視線、ハイブリッド対応。
【用語の要約】
- 目的:提案の採択率向上、商談成約率アップ、会議時間の短縮
- 対象:営業職、企画職、管理職(全社員)
- キーワード:PREP法、ストーリーテリング、バーバル/ノンバーバルコミュニケーション、オンラインプレゼン
2.なぜ今、「プレゼン力」が再評価されているのか
AIが資料を作れる時代になっても、プレゼンスキルの価値は下がるどころか上がっています。なぜでしょうか。
①オンライン商談の「強制力低下」
対面の会議室なら、相手は逃げられず話を聞いてくれました。しかし、ZoomやTeamsでは、話がつまらないと一瞬で「内職(メールチェック)」をされます。画面の向こうの相手の集中力を維持し続けるには、「飽きさせない構成」と「画面越しの熱量(デリバリー)」という、対面以上に高度なスキルが求められます。
②「共感」が意思決定の最後の鍵
機能や価格などの「スペック」は、Webサイトを見れば分かります。AIでも比較できます。それでも人間がプレゼンする意味は、「なぜ私たちがやるのか(Why)」という想いやストーリーを伝え、相手の感情(右脳)を動かすことにあります。「ロジックで納得させ、感情で決断させる」。この「人間にしかできないラストワンマイル」が、AI時代の差別化要因です。
③時短と生産性
「前置きが長い」「資料が文字だらけ」のプレゼンは、組織の時間を浪費します。Amazonなどの外資系企業が「パワーポイント禁止(Wordの資料を読ませてから議論)」などのルールを作るように、「短時間で要点を伝え切るスキル(エレベーターピッチ)」は、生産性向上の必須マナーです。
3.カリキュラムの第1歩:「ロジック」と「感情」のサンドイッチ
いきなりPowerPointを開いてはいけません。まずは「設計図」を作ります。研修では、論理的に伝える「PREP法」と、感情を動かす「ストーリーテリング」の両方を教えます。
PREP法(論理の骨組み)
- P(Point):結論。「A案を提案します」
- R(Reason):理由。「コストが20%下がるからです」
- E(Example):具体例。「他社でも同様の成果が出ています」
- P(Point):結論。「ですのでA案が最適です」
これは基本中の基本ですが、これだけでは人は動きません。「正しいけど、やりたくない」となるからです。
ストーリーテリング(感情の肉付け)
人は「物語」で動きます。ビジネスにおける物語とは、「課題(Before)と解決後の未来(After)のギャップ」を描くことです。
- 地獄(課題):「今、御社の現場はこんなに疲弊していますよね?」
- 天国(未来):「もし、この業務がゼロになったら、本来のクリエイティブな仕事に集中できますよね?」
- 橋(解決策):「その天国に行くための橋が、今回の提案です」
この「地獄と天国」を鮮明に見せることで、聞き手は「なんとかしたい!」という当事者意識を持ちます。
4.ビジュアル:直感的に伝わる「スライド作成術」
「読ませる資料」と「見せる資料」は別物です。プレゼンで使うのは「見せる資料」です。
「認知負荷」を下げる
人間の脳は、一度に処理できる情報量に限界があります。スライドに文字がびっしり書かれていると、聞き手は「読むこと」に脳のリソースを使い、「話を聞くこと」がおろそかになります。
- 1スライド・1メッセージ:1枚で言いたいことは一つだけ。
- ノイズの削除:不要な装飾、多すぎる色、複雑なアニメーションは「ノイズ」です。徹底的に削ぎ落とします。
「Zの法則」と視線誘導
人の目線は左上から右下へ「Z」の字に動きます。それに合わせて、最も重要なメッセージをどこに置くか、グラフや画像をどう配置するかというデザインの基礎原則を学びます。センスではなく、「知っていれば誰でもできるルール」として教えます。
5.デリバリー:ハイブリッド時代の「伝え方」
資料が完璧でも、話し方がボソボソしていては伝わりません。特に現在は「ハイブリッド環境(会議室+オンライン参加者)」という最難関の状況があります。
「カメラ目線」の魔力(オンライン)
対面では「相手の目」を見ますが、オンラインで画面の相手の顔を見ると、相手からは「伏し目がち」に見えます。「カメラのレンズを見る」ことこそが、オンラインにおける「アイコンタクト」です。「カメラを見て、笑顔で、普段より2割増しのテンションで話す」。これが画面越しに熱を伝える唯一の方法です。
ハイブリッド・プレゼンの難しさ
会議室に3人、Zoomに5人いる場合、どう振る舞うべきか?多くの人は目の前の3人ばかり見て話し、Zoomの5人を「傍観者」にしてしまいます。研修では、「基本はカメラ(Zoom)を見て話し、時折、会議室のメンバーに視線を配る」というマルチタスクな視線配分をトレーニングします。
6.効果的な研修手法:「恥をかく」体験
プレゼン研修は、座学だけでは絶対に上手くなりません。「自分がどう見えているか」を客観視する「荒療治」が必要です。
①動画撮影&セルフチェック
自分のプレゼンをスマホで録画し、自分で見返します。「えー」「あー」という口癖(フィラー)の多さ、貧乏ゆすり、暗い表情……。直視したくない現実ですが、「自分の姿を客観的に見る」こと以上の教材はありません。これだけで劇的に改善します。
②AIによるプレゼン解析
最新のLMSやツールでは、録画データをAIが解析してくれます。「話すスピードが速すぎます(1分間400文字推奨)」「アイコンタクトが不足しています」「ポジティブな単語が少ないです」人間(講師)に言われるとカチンとくる指摘も、AIのデータなら素直に受け入れられます。何度も録画し、AIのスコアを上げていくゲーム感覚のトレーニングが有効です。
7.よくある失敗例と対策(FAQ)
- Q1.プレゼンが上手い人は「才能」だと言って、部下が諦めています。
- A.誤解です。スティーブ・ジョブズですら、本番前に何百回もリハーサルをしていました。プレゼンは「型」と「準備量」で9割決まる「技術」です。才能のせいにする前に、PREP法などの基本スキルを反復させてください。
- A.誤解です。スティーブ・ジョブズですら、本番前に何百回もリハーサルをしていました。プレゼンは「型」と「準備量」で9割決まる「技術」です。才能のせいにする前に、PREP法などの基本スキルを反復させてください。
- Q2.質疑応答で答えに詰まってしまいます。
- A.「想定問答集(Q&A)」の準備不足です。研修では、プレゼン本編だけでなく、意地悪な質問を投げかけ合う「Q&Aロープレ」を行い、切り返しトーク(「良いご質問ですね」「その点については持ち帰らせてください」等)を練習します。
- A.「想定問答集(Q&A)」の準備不足です。研修では、プレゼン本編だけでなく、意地悪な質問を投げかけ合う「Q&Aロープレ」を行い、切り返しトーク(「良いご質問ですね」「その点については持ち帰らせてください」等)を練習します。
- Q3.資料作成に時間がかかりすぎて残業が増えます。
- A.「ゼロから作っている」のが原因です。社内で「標準テンプレート(勝ちパターン資料)」を用意し、共有してください。デザインを悩む時間をなくし、中身(構成)を考える時間に充てさせることが重要です。
8.成功のカギは「LMS」での相互レビュー
集合研修で1回やって終わりでは、すぐに元に戻ります。日常業務の中で相互にフィードバックし合う文化を作りましょう。
クオークでは、
- 動画投稿課題:自分のプレゼン動画をLMSにアップロードし、講師や同僚がコメントや「いいね」をつける機能。
- AIコーチング:声のトーンや表情をAIが分析し、スコア化する自律学習ツール。
- テンプレート配布:プロのデザイナーが作った「伝わるスライドテンプレート」をLMS上で配布。
「営業の成約率を上げたい」「社内会議の質を高めたい」とお考えのご担当者様は、ぜひご相談ください。
9.まとめ
- プレゼンテーション研修は、単なる話し方の練習ではなく、相手を動かすための「合意形成スキル」の習得。
- ロジカルな構成(PREP法)に加え、感情を動かす「ストーリーテリング」と、認知負荷を下げるスライド作成術が必要。
- 自分の姿を録画して客観視し、AIや他者からのフィードバックを受ける「反復練習」が上達の近道。
▼次のアクション「AIを使ったプレゼン解析を試したい」「効果的なスライド作成術を全社に広めたい」とお考えのご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。



