社員研修は、体系的な知識やスキルの習得手段として重要ですが、そのあり方は、いま大きな転換点を迎え、eラーニングの方式を取る企業が増えてきました。
eラーニングとは、PCやスマホなどの端末を使い、主にインターネット経由で教材を学ぶ研修手法です。向いているのは、コンプライアンス・製品知識・オンボーディングなど「知識のインプット+理解度テスト」が中心の研修。単体で不向きなのは、技能実技やロールプレイ中心の研修で、集合研修と組み合わせる(ブレンディッド)と成果が出やすくなります。
eラーニング成功の鍵は「教材設計(短尺・演習)」「受講フォロー(リマインド/上司巻き込み)」「効果測定(完了率・テスト・現場KPI)」の3点です。これらを仕組み化するために、学習状況を一元管理できるLMS(Learning Management System:学習管理システム)の活用が有効です。
本記事では、eラーニングのメリットとデメリット、効果的な活用方法について、これから導入を検討する企業担当者の方にもわかりやすく解説します。
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LMSとは ~学習管理システムの基本から応用まで、機能と活用、これからを知る~ – Qualif eラーニングラボ
本記事でLMSの基本機能、応用機能について理解することで、LMSをより使いこなすことができます。
eラーニングとは?
eラーニング(e-learning)とは、e=electronicとlearningとを組み合わせた言葉で、パソコンやスマートフォン、タブレットなどのデバイスを活用し、インターネット経由で学ぶ学習方法です。eラーニングとは「研修をデジタル配信し、学習体験と運用を仕組み化する手段」ということもできます。
教材配信、受講・進捗・テスト結果・修了の記録を一元管理でき、集合研修の制約(会場・日程・移動)を減らせます。また、動画・スライド・クイズ等を「再利用可能な教材」として設計し、学習ログをもとに改善(離脱箇所、正答率、完了率)を回せます。
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クラウド型LMS導入でeラーニングの受講履歴の課題はどう解決する? | Qualif eラーニングラボ
従来型の集合研修は、会場の確保や講師の手配、参加者のスケジュール調整など、企業側にとって大きな手間とコストがかかっていました。また、集合研修は大勢の受講者に一斉に講義をする形式のため、各自の理解度の差をフォローできないまま講義が進んでしまうことも、大きな問題点でした。
変化の激しい現代のビジネス環境では、社員の早期成長に役立つ手段として、eラーニングが注目されています。
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eラーニングでのリスキリングで成果は出るか?~日本のデータで見る「続く設計」と売れる仕組み~ | Qualif eラーニングラボ
eラーニングに向く研修・向かない研修
向いている研修:
知識のインプットが中心で、理解度テストや反復が効く領域
例:コンプライアンス/情報セキュリティ/製品知識/オンボーディング/制度説明/品質・安全の基礎
単体では不向き:
実技・接遇・営業ロープレなど“身体性/対話”が成果の中心
例:加工・作業技能/接客ロールプレイ/コーチング/ファシリテーション
→ 対面・OJTと組み合わせる(ブレンディッド) で設計すると失敗しにくい
| 判断軸 | eラーニング適性が高い | 適性が低い(単体) |
| ゴール | 知識定着・理解度合格 | 実技習熟・対話スキル |
| 学習形態 | 反復・小テスト・事例 | 体験・フィードバック |
| 評価 | テスト・確認問題 | 実演評価・観察評価 |
| 受講者数 | 多人数に強い | 少人数向きが多い |
| 更新頻度 | 更新が多いほど有利 | 更新より体験が重要 |
eラーニングのメリット
企業側のメリット
・コストと手間の削減
集合研修では、会場の確保や講師の選定と費用、交通費、資料印刷費等が発生します。 また、受講対象者のピックアップと日程調整、連絡など、研修担当者の作業工数も膨大ですが、eラーニングであれば、インターネット経由で教材を配信すればよいので、これらの手間や費用が不要になります。
・品質が均一の教材を大勢に提供できる
集合研修では、講師の力量によって研修の質が左右される恐れがありますが、eラーニングであれば、受講者全員に同じ教材を提供できます。また、集合研修では会場によって人数が制限され、受講者が多い場合は実施回数を増やさなくてはなりませんが、eラーニングの場合は、受講者が数千人いたとしても、一つの教材を同時に配信することが可能です。さらに、汎用性のあるテーマであれば、教材は繰り返し利用できます。
・学習機会が均等
集合研修では、業務や居住地の都合で参加できないことがあるかもしれません。eラーニングは時間や場所が制限されないので、受講対象者に均等に教材を配信し、学習機会を提供することができます。
受講者側のメリット
・時間や場所を選ばず学習できる
インターネット環境があれば、時間や場所を選ばず取り組むことができます。移動や待機といった隙間時間に、学習を進められるでしょう。
・自分のペースで学習できる
eラーニングであれば、自分のスケジュールに合わせて、自分のペースで受講できます。受講内容についての事前の知識が受講者によって異なったり、得意不得意によって理解のスピードが違ったりする場合がありますが、難しい部分は繰り返し視聴するなど、他者を気にせず学習を進められます。
・視覚的にわかりやすい
eラーニングは、モバイル機器の画面を通した学習であるため、スライドや動画を見て学べます。拡大やスロー再生など、eラーニングならではの方法で、視覚的に理解を深めることができます。
・受講を始めやすい
若手社員はモバイル機器で動画を見ることになれています。学習塾でeラーニングを経験した人も多いでしょう。企業研修がeラーニングで提供されれば、手軽に受講をスタートできます。
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企業研修を変えるモバイルラーニング ~スマホ学習の効果・リスク・LMS選定基準~ | Qualif eラーニングラボ
eラーニングのデメリット
企業側のデメリット
・ITの知識が必要
eラーニングを受講するためには、モバイル機器の操作が必要ですが、受講者がこれを苦手とする場合もあります。問い合わせに対応できるよう、運営者には一定のITリテラシーが求められます。
・強制力が弱い
eラーニングの受講は、学習者の主体性に依存します。効果的なeラーニングの実現のためには、進捗状況を把握し受講を促すといった工夫が必要です。
受講者側のデメリット
・モチベーションの維持が難しい
eラーニングは各自で取り組むため、モチベーションが保ちづらいです。やる気がないとなかなか進まない、という難点があります。
・実技などの実践ができない
eラーニングは、画面上で学習するものなので、実技学習には不向きです。実技習得研修にはeラーニングでのインプットと、対面式研修によるアウトプットをうまく組み合わせることが必要になります。
・インターネット環境が必要
eラーニングはモバイル機器をインターネットに接続して行うものなので、インターネットが利用できる環境でないと、学習機会が制限されてしまいます。
・コミュニケーションがとれない
受講のタイミングがそれぞれ違い、各自で画面に向かって学習する形態のため、受講者同士や講師とのコミュニケーションの機会がありません。SNS機能で交流を深める、双方向コミュニケーションの機会を設ける、などの方法を考えましょう。
| eラーニングのメリット・デメリット | ||
| メリット | デメリット | |
| 企業側 | ・コストと手間の削減 ・品質が均一の教材を大勢に提供できる ・学習機会が均等 | ・ITの知識が必要 ・強制力が弱い |
| 受講者側 | ・時間や場所を選ばず学習できる ・自分のペースで学習できる ・視覚的にわかりやすい ・受講を始めやすい | ・モチベーションの維持が難しい ・実技などの実践ができない ・インターネット環境が必要 ・コミュニケーションがとれない |
eラーニングをLMSでどう運用するか
eラーニングを導入し、より効果的に活用するために、上記のデメリットを解消する工夫をしていきましょう。
受講者のモチベーションを維持し、強制しなくても受講を継続してもらうには、まず魅力的な教材が必要です。ゲームやクイズを取り入れた教材は効果的ですし、5~15分程度の短いコンテンツで小さい単位ごとに学習できる「マイクロラーニング」教材も、隙間時間でのeラーニングに向いています。
また、研修担当者が各人の受講状況を把握し、受講を促すメールを送信したり、受講者同士や講師とのコミュニケーションが取れる仕組みを導入したりすれば、やる気の維持につながります。
実技を伴う研修は、eラーニングだけでは難しいですが、集合研修と合わせることで解決できます。eラーニングで基礎知識を学び、集合研修で実践、更にeラーニングで復習するというブレンディッドラーニングを取り入れれば、効率よく実技を身につけることができるでしょう。
これらの機能を実現するためには、LMS(Learning Management System:学習管理システム)の導入が必須です。
LMSはeラーニングを管理するシステムで、教材の作成・更新や配信、受講者の学習状況やテスト結果を一元管理することができます。これにより、管理者は各人の進捗に応じた声掛けができますし、掲示板やチャット機能で、受講生同士や講師とのコミュニケーションが図れます。LMSの導入は、eラーニングが抱える課題の解決につながります。
以下に課題と対策案を記載します。
課題:受講が進まない
→ 機能:期限設定/自動リマインド/上司向け進捗 → 効果:期限内完了率が上がる
課題:理解度が不明
→ 機能:小テスト/合格条件/設問分析 → 効果:弱点教材の改善ができる
課題:監査・証跡が必要(コンプラ等)
→ 機能:履歴ログ/修了証/エクスポート → 効果:監査対応がラクになる
課題:教材更新が多い
→ 機能:版管理/差し替え/周知 → 効果:情報鮮度を担保できる
参考記事はこちら↓
LMSとは ~学習管理システムの基本から応用まで、機能と活用、これからを知る~ | Qualif eラーニングラボ
FAQ(よくあるお問合せ)
Q1 eラーニング教材は、どうやって作ればよいですか?
A ビジネスマナーやコンプライアンスといった汎用性のあるテーマであれば、ベンダーが持っている教材を利用することができます。自社独自の内容を教材にしたい場合は、ベンダーと相談しながら、コンテンツを作成すると良いでしょう。紙ベースやPDF、PowerPoint形式の資料があれば、それをeラーニング教材にすることもできます。
参考記事はこちら↓
- 「eラーニングコンテンツ内製化」徹底解説シリーズ ①/5 ~社内ですぐに始められる失敗しない段取りとは?~ | Qualif eラーニングラボ
- e ラーニングコンテンツの作成を内製化!継続的にできる4つの方法 | Qualif eラーニングラボ
- 第1回:生成AIで教育コンテンツ制作が劇的に変わる!最新プロセス徹底解説 | Qualif eラーニングラボ
Q2 どんなeラーニング教材でもLMSを選ばず使用できますか?
A LMSとeラーニング教材の間で、さまざまなデータを正確にやり取りする方法を取り決めた、SCORMという国際的標準規格があります。SCORMに準拠した教材であれば、異なるLMS間でも同じeラーニングコンテンツを動作させることができます。
参考記事はこちら↓
「いまさら聞けないSCORMとは?」~eラーニングの標準規格の現状と今後~
Q3 eラーニングを導入するときに気を付けることは何ですか?
A まず、導入する目的を明確にしましょう。すべての教育がeラーニングで学べるわけではありません。本記事のメリット・デメリットを踏まえた上で、誰に向けたどんな研修をeラーニングで実施するか。対象人数や予算はどれくらいなのか。eラーニング以外の手法と組み合わせて活用するのか、など、具体的に検討し、自社に最適なeラーニングの導入を検討しましょう。
Q4:eラーニングとオンライン研修(Zoom等ライブ研修)の違いは?
A:eラーニングは「好きな時に自主学習できる非同期型」で、反復学習や知識定着に強みがあります。一方、オンライン研修は「講師と受講者がリアルタイムで交流する同期型」で、質問やディスカッション、演習が必要なテーマに向いています。企業研修では両方を組み合わせる運用が効果的です。
Q5:1コンテンツは何分が目安?(マイクロラーニングの設計目安)
A:1コンテンツは「5〜10分」が最適です。集中力が保ちやすく、隙間時間で学習しやすい長さであり、スマートフォン視聴にも適しています。短尺化することで完了率と復習率が向上します。1テーマ1メッセージを徹底すると効果的です。
Q6:受講が進まない時、まず何を見直す?
A:受講率低下の原因は「教材」「設計」「運用」の3分類で確認します。教材が長すぎないか、視聴しづらい構成になっていないかをチェック。次にLMS設定(通知・期限・割当など)が適切か、最後に上司や職場での促し施策が整っているかを見直します。改善の優先度も判断しやすくなります。
Q7:SCORM対応とは何ができる状態か?
A:SCORM(Sharable Content Object Reference Model:スコーム)とは、LMSとeラーニングコンテンツとの間でeラーニング受講の進捗状況のデータ、受講履歴データ(学習のステータス、確認テストの得点、アンケートの回答内容など)を正確にやりとりする方法を取り決めた国際的な標準規格で、2000年にアメリカ国防総省が設立した「ADLイニシアティブ(Advanced Distributed Learning Initiative)」によって策定されました。このSCORMに準拠することで、異なるLMS間でも同じeラーニングコンテンツを動作させることができるというメリットがあります。
参考記事はこちら↓
「いまさら聞けないSCORMとは?」~eラーニングの標準規格の現状と今後~ | Qualif eラーニングラボ
Q8:LMSを入れると、何がどこまで自動化できる?
A:LMSを導入すると、教材配信、進捗管理、理解度テストの採点、督促メール送付、ログ取得などが自動化されます。担当者は手作業の管理から解放され、分析や改善施策に時間を割けます。研修運用の工数削減と品質向上を同時に実現できます。
Q9:実技研修はどう設計すべき?(ブレンディッドの型)
A:実技研修は「基礎知識はeラーニング」「操作・実演は対面」「定着はテストと振り返り」というブレンディッド型が最適です。事前学習で土台を揃えることで、実技当日の演習時間を最大化できます。終了後はLMSで振り返りとフォローを行い、習熟度を確認しながら定着を促進します。
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「OJTとeラーニングで人材育成を強化する方法」〜新入社員を「配属後すぐに活躍できる人材」に育てる研修設計〜 | Qualif eラーニングラボ
まとめ
eラーニングは、集合研修の課題を解決することのできる学習方法です。ですがeラーニングの活用を成功させるには、企業のフォローが欠かせません。LMS(学習管理システム)の活用によるきめ細かなサポートがあれば、eラーニングをただのインプット作業で終わらせず、より実践的な力が身につきます。企業側のサポートによるモチベーションの維持は、社員の自律学習習慣の醸成にも役立ちます。
これからのeラーニングは、AIによる教材作成や、VR技術を使った体験学習など、どんどん進化していくでしょう。eラーニングを戦略的に活用して、社員と組織の成長を目指しましょう。
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「eラーニング教材を販売するためのLMSとは」~学習講座・学習コンテンツ販売・決済がポイント~ | Qualif eラーニングラボ
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