CBT(Computer Based Testing)

目次

はじめに

「昇格試験の採点が手作業で、人事部の残業が減らない」
「全国の支店から解答用紙を郵送させているため、結果が出るまでに2週間かかる」
「紙のテストだと、問題用紙が流出したり、カンニングされたりするリスクが怖い」

人材育成において「教育(インプット)」と同じくらい重要なのが、その効果を測定する「試験(=アウトプット)」です。しかし、デジタル化が進む現代においても、試験運用だけはアナログな「紙とペン」に頼っている企業が少なくありません。

この非効率とセキュリティリスクを一挙に解決するのが、「CBT(Computer Based Testing)」です。英検や漢検、ITパスポートなどの国家資格も続々とCBTへ移行しており、もはやテストのデファクトスタンダード(標準)となりつつあります。

本記事では、CBTの定義や導入メリット、インターネット試験(IBT)との違い、そして「カンニング対策」や「テスト理論」といった運用の核心部分について解説します。

1.CBTをひとことで言うと?

CBT(Computer Based Testing)とは、一言で言うと「コンピュータを使って実施する試験方式」のことです。

問題用紙とマークシートを使う従来の試験(PBT:Paper Based Testing)に対し、CBTではコンピュータの画面に問題が表示され、マウスやキーボードを使って解答します。

一般的には、全国に設置された「テストセンター」などの会場に行き、そこに設置されたPCで受験するスタイルを指しますが、広義には社内のPCルームで行う集合研修後の確認テストなども含まれます。

【用語の要約】

  • 目的:採点の自動化、実施コスト削減、受験機会の拡大
  • 対象:資格試験、社内昇格試験、採用適性検査、コンプライアンス確認テスト
  • 英語:Computer Based Testing
  • 対義語:PBT(Paper Based Testing:紙の試験)

2.似ているようで違う「IBT」との違い

CBTとよく混同されるのが、「IBT(Internet Based Testing)」や「WBT(Web Based Testing)」です。両者の最大の違いは、「場所」と「監視」にあります。

CBT(テストセンター型)

  • 場所:運営会社が用意した専用の会場(テストセンター)。
  • 環境:厳格な本人確認があり、監視員が常駐。私物の持ち込みは禁止。
  • 用途:「厳格さ」が求められる試験(国家資格、昇進試験、入社試験)。

IBT/WBT(自宅・社内型)

  • 場所:受験者の自宅、会社の自席、カフェなど。
  • 環境:自分のPCやスマホで受験。監視の目は(基本的には)ない。
  • 用途:「手軽さ」が求められる試験(eラーニング後の理解度チェック、練習問題)。

※ただし最近は、IBTでもAI監視カメラを使って不正を防ぐ技術が進化しており、境界線は曖昧になりつつあります。自社の試験に「どれくらいの厳格さが必要か」で使い分けます。

3.企業がCBTを導入する「3つの革命的メリット」

紙のテスト(PBT)からCBTに移行することで、試験運営は劇的に変わります。

①採点業務の「ゼロ化」と即時フィードバック

最大にして最強のメリットです。マークシートを読み取る機械すら不要です。受験者が「終了」ボタンを押した瞬間に、0.1秒で採点結果が出ます。人事担当者が夜なべして採点する必要はなくなり、受験者もその場で合否が分かるため、すぐに復習(間違った箇所の見直し)に移れます。これは学習効果(ID理論)の観点からも非常に有効です。

②「音声・動画」を使った実践的な出題

紙では「文字」と「静止画」しか出せません。CBTなら、

  • 英語テスト:イヤホンでリスニング問題を出題する。
  • 接客テスト:クレーム対応の動画を見せて、「適切な返答」を選ばせる。
  • プログラミング:実際にコードを書かせて動作判定する。といった、より実務に近いリッチな試験が可能になります。

③不正行為(カンニング)の防止

「隣の人の答えを見る」という古典的なカンニングは、CBTでは不可能です。「ランダム出題機能」を使えば、隣り合って座っているAさんとBさんで、出題される問題の順番や選択肢の並び順をバラバラにすることができます。また、問題用紙の持ち帰り(流出)リスクも物理的にゼロになります。

4.テストの質を高める「IRT(項目反応理論)」

CBTの真価は、単にデジタル化することだけではありません。「IRT(Item Response Theory:項目反応理論)」という統計理論を用いることで、個人の能力をより正確に測れるようになります。

従来のテスト(素点方式)の弱点
「100点満点で80点だった」と言っても、その回が「簡単な問題ばかり」だったら、実力があるとは言えません。逆に「難しい回」なら60点でも凄いかもしれません。紙のテストでは、実施回ごとの難易度調整が非常に困難でした。

CBT×IRT(適応型テスト)
IRTを導入したCBTでは、「受験者の回答に合わせて、次の問題を変える(CAT:Computer Adaptive Testing)」ことができます。

  • 正解し続けている人には、より難しい問題を出して、高い能力限界を測る。
  • 間違えた人には、易しい問題を出して、基礎力を測る。これにより、少ない問題数で、まぐれ当たりを排除した「真の能力値」を測定できます。TOEFLやGMATなどの世界的な試験は、この方式を採用しています。

5.導入時の「落とし穴」とセキュリティ対策

「じゃあ明日からCBTにしよう」と思っても、いくつか注意すべきハードルがあります。

①端末環境の統一(動作保証)

社用PCのスペックやブラウザのバージョンがバラバラだと、「特定の社員だけ画像が表示されない」「フリーズして再受験になった」というトラブルが起きます。事前の動作検証(推奨環境の定義)が必須です。

②「替え玉受験」と「画面共有」のリスク

在宅受験(IBT)の場合、「カメラに映らない死角にカンニングペーパーを貼る」「Zoomで画面共有して詳しい友人に解いてもらう」といったハイテク・カンニングのリスクがあります。これを防ぐには、以下のような対策が必要です。

  • AI監視機能:Webカメラで目線の動きを検知し、不審な挙動があればアラートを出す。
  • ブラウザロック:試験中は他のウィンドウやタブを開けないようにする専用ブラウザを使う。

6.CBTに関するよくある質問(FAQ)

  • Q1.既存の紙の試験問題をそのままCBT化できますか?
    • A.基本的には可能ですが、注意が必要です。「長文読解」などは、画面で読むとスクロールが大変で、紙よりも難易度が上がってしまうことがあります。画面で見やすいレイアウトに調整するか、1問あたりの文章量を減らすなどの工夫(再編集)が推奨されます。
  • Q2.記述式(論文)の採点はできますか?
    • A.選択式(多肢選択)は自動採点できますが、記述式の自動採点はまだ発展途上です(AIによるキーワード採点などはありますが、精度のチューニングが大変です)。一般的には、選択式は自動採点し、記述式のみ人間が画面上で採点する「ハイブリッド採点」運用が多いです。
  • Q3.システムのコスト感は?
    • A.「LMSの標準機能」でやるなら追加コストはゼロですが、セキュリティ機能は弱いです。専用の「CBTプラットフォーム」を使う場合は、受験者数に応じた従量課金(1受験あたり数百円〜)になるケースが一般的です。

7.成功のカギは「システム」と「作問(テストエンジニアリング)」

CBT導入で最も重要なのは、「システムを入れること」ではありません。「良い問題を作ること」です。

いくらシステムが立派でも、問題自体が「不適切な日本語」だったり、「正解が推測できる選択肢」だったりしたのでは、正確な測定はできません。また、ランダム出題をするには、大量の問題ストック(アイテムバンク)を用意する必要があります。

クオークでは、

  1. CBTシステムの提供:厳格な試験にも対応できる、セキュアなテストプラットフォームを提供します。
  2. 問題作成支援:テスト理論に基づいた「良質な問題」の作成代行や、既存問題のブラッシュアップを行います。
  3. SCORM/xAPI連携:テスト結果をLMSやLRSに自動連携し、人材データベースと統合します。

「昇格試験をデジタル化したいが、不正が心配」「問題を作るノウハウがない」とお悩みのご担当者様は、ぜひご相談ください。

8.まとめ

  • CBTとは、PCで行う試験のこと。即時採点、コスト削減、多様な出題形式などのメリットがある。
  • 厳格な「テストセンター型」と手軽な「IBT(在宅型)」があり、目的に応じて使い分ける。
  • 成功には、カンニング対策(セキュリティ)と、質の高い問題作成(テスト理論)の両輪が必要。

▼次のアクション「社内試験をCBT化して業務効率を上げたい」「不正のできないWebテストを実施したい」とお考えのご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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