2025年2月13日、カオナビ社に対する米カーライル社のTOBが発表されました。そのスキームや目的などの解説は様々な記事が出ているので検索して読んでいただくとして、本稿では同じHRテック領域でSaaSサービスを立ち上げている一人として、タレントマネジメントというものが今後どうなっていくと考えているのかを書いてみたいと思います。
タレントマネジメントとは、従業員のスキル・知識・能力・経験といった情報を管理して、人材の配置や昇進・昇格に活かしていこうという考え方です。日本では2010年頃から広まってきました。
現在は、ビジネスの変化の速度が上がって社員に求められるスキルが複雑化ました。さらに人材の流動化が進んで社内に在籍する社員が多様化しています。結果として、自社にどのような人材がどれだけいるのかが見えづらくなって、このような管理ツールが求められるようになりました。カオナビをはじめとして、タレントパレット、ジンジャー、HRBrainなど様々なタレントマネジメントツールが日本でも登場し、上場した会社も何社も出ました。
しかしそこから社会の変化がより一層進んだことで、タレントマネジメントツールの役割が今後は大きく変わっていく必要があると個人的には感じています。具体的には以下のような状況が起きていると考えます。
- 企業が人材を管理するのではなく、個人が自らのキャリアを切り開くことがこれまで以上に重要になる。
- 人材の流動化がより一層進み、企業が自社の社員を、自社に在籍している間だけ管理しても、無意味とまでは言わないが中途半端でしかない。
- スキルや知識、経験を持っていることだけ管理しても意味がない。実際にそのスキルを業務で使えているのか、業務で成果をあげられているのかまでを見て初めて意味をなす。
- ジョブ型雇用が進み、組織単位での人材管理ではなく、スキルやプロジェクトベースで人材を管理するようになる。プロジェクトには、自社の社員だけではなく、他社の社員、フリーランス、副業人材等、様々な働き方の人が集う状態になり、自社の社員だけを管理してもな状態に。
- 業務に求められるスキルがより一層多様化・細分化され、年に1回スキルの棚卸しをしてタレントマネジメントデータベースを更新するようなことをしていたのでは、到底追いつかない。
このような背景の下でタレントマネジメントシステム(TMS)はどうしていくべきなのかというと、ちょっと我田引水気味にはなってしまうのですが、「過去に身に付けたスキルを管理するだけのシステム、言い換えると、社内人材データベースのままでは生き残れない。個人のキャリア自立を支援するシステム、気取って言うと、個人のスキル開発を支援して未来を切り開くことをサポートするようなシステムに進化するべき。」と考えます。
そういう意味では、TMSとLMSが融合する方向に進んでいくことでしょう。
- 学習履歴~スキル獲得~スキル活用までを一気通貫で管理する機能
- 本当の意味でパーソナライズされた、学習やスキルのレコメンド機能
- スキルと業務のマッチング機能
このあたりを主戦場として、TMSにラーニング機能を付加して攻めてくるサービス群と、LMSにスキル管理機能を加えて攻めてくるサービス群との戦いになると予想します。これまでのタレントマネジメントシステムは、どちらかというと静的なデータベースとでもいいましょうか、管理できるユーザ属性情報の項目数を増やす方向に進んでいたので、ラーニングのような動的なデータの生成機能とでもいうようなものは後回しだった印象でしたが、これからはこちらの方向に手を広げてくるのだろうと思います。
とはいえ、、、Qualifもラーニング機能では負けるつもりはないのでね!