オンボーディングとは? 入社後すぐに即戦力化させる目的・メリット・実行ステップを解説

オンボーディングとは、中途入社者を含めた新入社員が、入社後、早期に職場に適応し能力を発揮できるように支援する施策のことです。オンボーディングの目的は、主に①即戦力化(立ち上がり短縮)②早期離職の防止③一体感の醸成の3つです。

採用活動にどれほど力を入れても、入社後のサポートが不十分であれば、

「思ったより立ち上がりに時間がかかる」
「業務に馴染めず、早期離職してしまう」

といった問題が起こりやすくなります。

本記事では、これからオンボーディングを整備したい企業の方に、オンボーディングのメリットや実施のポイント、役立つツールについて実践のヒントを得ていただける内容を解説します。

目次

オンボーディングとは?

オンボーディングとは、新入社員が早期に企業に適応できるように育成する施策です。入社直後の社員は、組織の雰囲気や業務に対して不安を抱えています。企業が適切にオンボーディングを実施することで、早期に新人の不安が解消され、組織に馴染み、能力を発揮できるようになるでしょう。オンボーディングは、入社直後だけでなく、配属後も含む継続的人材育成なので、教育担当者だけでなく広範囲の社員が関わります。

オンボーディングの施策内容にはさまざまなものが含まれますが、規程・基礎知識などは 標準化できる領域で、eラーニング+確認テストで対応可能です。文脈が必要な領域(関係構築など)は対面/同期コミュニケーションで補完します。

また、オンボーディングは「新入社員に知識・スキルを教える研修」ではなく、「入社前から配属後まで、職場に適応・定着して成果を出すまでを支える全社プロセス」であるところもポイントです。

オンボーディングが注目される背景

・人手不足

帝国データバンクによると、正社員の人手不足を感じている企業の割合は、2025年7月時点で50.8%となっています。

参照元:人手不足に対する企業の動向調査(2025年7月)

また、近年では新入社員の3割が3年以内に離職すると言われています。

参照元:https://www.mhlw.go.jp/content/11805001/001580844.pdf

転職者の数も増加傾向にあり、総務省が2025年2月14日に発表した2024年労働力調査の詳細集計平均結果によると、年間の転職者数は約331万人(前年比0.9%増)と3年連続で増加しています。

参照元:労働力調査(詳細集計)2024年(令和6年)平均結果の要約

採用しても組織に馴染めず、短期間で退職してしまうと、労力と費用の両面で、新たな人材を採用するのは容易ではなく、人手不足状態が継続することになってしまいます。

・人的資本経営

人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。

オンボーディングは、この考え方を実践するための施策です。採用した人材の価値を最大限引き出すために投資をし、企業の成長につなげる考え方が、現在重視されています。

オンボーディングの目的

・即戦力化

入社した社員は、職場のシステムやルールなど、覚えることが多くあります。また、これまでの知識や価値観をリセットするアンラーニングが必要な場合もあるでしょう。オンボーディングは、新人の組織への順応と即戦力化がスムーズになるよう手助けします。

・早期離職の防止

早期離職の原因は、仕事や職場に馴染めなかったことが大きな割合を占めています。オンボーディングを実施することで職場の人間との相互コミュニケーション機会を増やす、業務の目的を十分に説明し理解してもらう、等が可能となり、新メンバーの不安を解消することにつながります。早期離職・転職増で「定着」が経営課題になっているケースも多く見られます。

・一体感の醸成

オンボーディングによって、企業理念や文化を共有することができ、組織の一員としての自覚が生まれます。既存社員と交流する機会を作ることで、会社の雰囲気に早く慣れることもできるでしょう。また、オンボーディングは教育担当者だけでなく広範囲の社員が取り組む施策であるため、メンバーが組織やその中の人員を大切にする風土の醸成に役立ちます。

オンボーディング実施のメリッ

・コスト削減

企業は従業員の採用と育成にコストをかけています。早期退職してしまえばこれらの費用が無駄になりますし、新たな採用のための労力やコストがさらに必要になります。オンボーディングが成功して、採用した社員が定着すれば、このような無駄を省くことができます。

・従業員満足度(ES)の向上

オンボーディングによって、各種面談やミーティング、相談窓口などの施策が実施されます。その結果、コミュニケーションが活発になり、きめ細かなフォローが行われ、従業員満足度(ES)がアップします。ESの向上は社員の定着、さらには組織の成長につながります。

・生産性の向上

効果的なオンボーディングを実施し、新入社員の即戦力化が実現できれば、早い段階で企業の業績に反映されます。教育施策が長引かなければ、新人教育に携わった担当者の生産性向上も期待できるでしょう。

オンボーディング実施のポイント

・人間関係

オンボーディングにおいてまず重要なポイントは、人間関係です。上司や同僚、別の部署の先輩社員などと交流する機会を設けることで、新入社員の不安を和らげます。ランチタイムを利用したりレクリエーションを取り入れたりして、気軽に楽しめるものを取り入れてもよいでしょう。

人事担当者は新人と現場との橋渡しを心掛け、既存の社員は職場全体で新人をフォローしようという姿勢が大切です。新人の意見を聞いてオンボーディングの改善に役立てることも有益です。

・教育体制

入社研修のブラッシュアップやマニュアルの整備など、オンボーディングに有効な教育制度を充実させましょう。内容によっては外部研修を利用するのも一つの方法です。リモートでオンボーディングを実施する場合には、後に述べるeラーニングが役立ちます。その際にはLMS(Learning Management System:学習管理システム)を導入し、効果的に研修を実施しましょう。また、受け入れる側にもオンボーディング研修を実施して主体的な協力を仰ぎましょう。

参考記事はこちら↓
LMSとは ~学習管理システムの基本から応用まで、機能と活用、これからを知る~ | Qualif eラーニングラボ

・スモールステップ

スモールステップ法とは、目標を細かく設定し、クリアしながら最終的なゴールを目指す教育手法です。中間目標への到達を積み重ねることで、新入社員は達成感を得て、モチベーションを維持しながら取り組むことができます。オンボーディングにおいても、この手法を取り入れると良いでしょう。

これまでの研修との違い

・期間

新人研修は、入社直後に1~3か月程度の期間で実施されるのが一般的です。研修終了後には各部署に配属され、それぞれ必要な実務を学びます。それに対してオンボーディングは、定期的な面談やモニタリングが継続的・長期的に実施されることが特徴です。

・目的

従来型研修の主な目的は、知識やスキルの習得ですが、オンボーディングは、早期に職場環境に適応することが大きな目的です。そのため知識やスキルだけでなく、企業理念や企業文化の共有や人間関係の構築といった、包括的なサポートを組織全体で行います。

・内容

オンボーディングは基本的な内容の研修にとどまらず、配属後も含めた継続的な人材育成です。個々のキャリアやスキルに合わせたプログラムを実施することも、従来の新人研修との違いです。また、配属先の部署だけでなく、他部門の業務やルールを学ぶ機会もあり、広範囲の社員が関わりながら職場全体で新入社員を迎え入れるプロセスが、オンボーディングです。

オンボーディングにはeラーニング

オンボーディングを実施する際、eラーニングを活用すると効率よく進めることができます。eラーニングはスマートフォンやタブレットを使って、インターネット経由で学ぶ学習方法なので、時間や場所を選ばず取り組むことができますし、自分のペースで学習を進めることができます。

さらに、LMS(Learning Management System:学習管理システム)を導入し、これを活用してeラーニング(e-learning)を配信すれば、受講者ごとの学習進捗状況や成績等を管理者が確認でき、一人ひとりにきめ細かなフォローアップを行うことができます。特に規程・基礎知識などは 標準化できる領域です。eラーニング+確認テストを活用しましょう。

参考記事はこちら↓
「OJTとeラーニングで人材育成を強化する方法」〜新入社員を「配属後すぐに活躍できる人材」に育てる研修設計〜 | Qualif eラーニングラボ

FAQ(よくあるお問合せ)

Q1 オンボーディングは、どのタイミングで実施するのが効果的ですか?

A   高い効果を得るためには、入社前から実施すると良いでしょう。同期入社者との懇談会や先輩社員との交流会、職場見学、定期的な面談などを実施し、新入社員との信頼関係を築いていくことで、新人の不安を払拭することにつながるでしょう。

Q2 オンボーディングは、どのようなプロセスで実施すればよいでしょうか?

A  まずは、新入社員に求めるルールやスキルを明確にし、目標を設定しましょう。この時、過去の早期退職事例を確認すると、必要なサポート体制が見えてきます。それからプログラムを作成し、実行します。人事部だけでなく他部署の意見も取り入れ、協力し合いながら、全社で新人を受け入れていきましょう。

Q3 オンボーディングとOJTはどこが違うのですか?

A   OJTは、知識とスキルを得て即戦力として業務に当たることができる人材育成が目的ですが、オンボーディングは、新人を組織に馴染ませることが主な目的です。そのためOJTは業務に関する指導が中心になりますが、オンボーディングはそれに加えて、企業独自の文化やルールなどを伝え、帰属意識のアップにつなげます。

まとめ

オンボーディングは、新入社員の職場への適応を促し、企業にとって有用な人材にするための施策です。オンボーディングの実施には、全社で新人をサポートする姿勢が大切です。

オンボーディングを成功させるための教育手法の一つとして、eラーニングがありますが、eラーニングの実施には、LMS(学習管理システム)の導入が効果的です。

新入社員のエンゲージメントを高め、早期離職を防止するために、オンボーディングをうまく実施していきましょう。

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