はじめに
「内定を出した学生と連絡が取れなくなり、入社式の当日に『辞退します』とメールが来た(サイレント辞退)」
「優秀な学生ほど、他社からも内定をもらっており、最後の最後まで迷っている」
「入社初日から『思っていたのと違う』とリアリティ・ショックを受け、5月には元気がなくなってしまう」
空前の「売り手市場」が続く中、企業にとって「内定承諾」はゴールではありません。入社日(4月1日)に無事に席についてもらうまでが、長く険しい採用活動です。
しかし、多くの企業が行っている「内定者研修」は、昭和・平成の時代から変わっていません。「分厚い課題図書を読ませてレポートを書かせる」「毎月のように懇親会に呼び出す」……。これらは、多忙な学生(卒論や卒業旅行)にとって「負担」でしかなく、逆に「この会社、入社前から面倒くさいな(ブラックかも?)」というネガティブな印象を与えかねません。
現代の内定者研修に求められるのは、「拘束」ではなく「伴走(オンボーディングの早期化)」です。本記事では、Z世代の内定者が抱える「3つの不安」を解消し、入社初日からロケットスタートを切るための、デジタルを活用した最新の内定者研修について解説します。
1.内定者研修をひとことで言うと?
内定者研修とは、一言で言うと「内定(10月頃)から入社(4月)までの期間に、社会人としての基礎をインプットしつつ、入社への不安を取り除き、エンゲージメントを高めるための準備プログラム」のことです。
最近では、入社後の定着(オンボーディング)を前倒しで行うという意味で、「プレ・オンボーディング」とも呼ばれたりします。
その目的は、単なる「スキルの習得」だけではありません。「本当にこの会社でよかったのか?」と悩む学生(内定ブルー)に対し、「この会社なら成長できる」「同期と仲良くなれそうだ」という確信を持たせ、「辞退防止(リテンション)」を行うことが最大のミッションです。
【用語の要約】
- 目的:内定辞退の防止、入社不安の解消(内定ブルー対策)、社会人基礎力の早期習得
- 対象:内定承諾後の学生(大学4年生、大学院2年生など)
- 時期:内定式(10月)〜入社式(3月)
- キーワード:プレ・オンボーディング、内定ブルー、マイクロラーニング、Z世代
2.なぜ今、内定者研修の「質」が問われるのか
「とりあえず飲み会をしておけばいい」「通信教育のテキストを送っておけばいい」という考え方は危険です。環境の変化により、学生の心理は大きく変わっています。
①「内定ブルー」と「オヤカク」の壁
複数の内定を取ることが当たり前の今、学生は内定承諾後も「本当にここでいいのか?」と迷い続けています。さらに、保護者が「その会社で大丈夫なの?」と介入してくる「オヤカク(親への確認)」の壁もあります。
この時期に放置されると不安が増幅し、他社の魅力的なオファーに揺らいでしまいます。企業側からの「継続的かつ適切な接触」がなければ、心は簡単に離れていきます。
②「リアリティ・ショック」の早期緩和
「入社したら、バリバリ活躍できると思っていたのに、実際は雑用ばかり……」入社後に理想と現実のギャップに苦しむ現象です。内定期間中に、動画などで「実際の仕事の様子」や「泥臭い一面」も含めて少しずつ見せておくことで、入社後のショックを和らげ、「覚悟」を醸成する効果があります。
③「タイパ」重視のZ世代へのアピール
Z世代は効率(タイムパフォーマンス=タイパ)を重視します。「手書きのレポート」や「郵送でのやり取り」といったアナログな研修を行うと、「この会社のDXは遅れている」「働きにくそうだ」と判断されます。逆に、「スマホでサクサク学べるアプリ(LMS)」を提供すれば、「進んでいる会社だ」「成長できそうだ」というポジティブな評価に繋がります。
3.学生が抱える「3つの不安」を解消するカリキュラム
内定者研修の中身(コンテンツ)は、企業側が「教えたいこと」ではなく、学生が「知りたいこと(不安に思っていること)」を軸に設計すべきです。彼らの不安は大きく3つです。
不安①「人間関係」への不安
- 学生の声:
「同期と仲良くなれるかな?」「怖い上司がいたらどうしよう?」 - 解決策:
SNS機能付きLMS(コミュニティ)の活用
いきなりリアルで合わせる前に、LMS上の自己紹介スレッドや掲示板で交流させます。「趣味が同じ人がいる!」「意外と話しやすそう」という安心感を作ります。先輩社員のインタビュー動画を配信し、「どんな人が働いているか」を見せるのも効果的です。
不安②「能力」への不安
- 学生の声:「パソコンが苦手だけど大丈夫かな?」「敬語が全然使えない……」
- 解決策:基礎スキルのマイクロラーニング配信
「Excelの基本操作」「ビジネスメールの型」「Zoomの使い方」など、入社前に知っておけば安心できるスキルを、スマホで見られる短い動画で提供します。「これだけやっておけば大丈夫」というお守りを持たせてあげるイメージです。
不安③「生活」への不安
- 学生の声:「朝起きられるかな?」「一人暮らしの準備はどうすれば?」
- 解決策:生活リズムを整えるライトな課題
「毎朝8時にLMSにログインして『おはようボタン』を押す」といったゲーム感覚のタスクや、人事担当者による「新生活準備コラム」などで、社会人モードへの切り替えをゆるやかに支援します。
4.成功のカギは「マイクロラーニング」での提供
内定期間中の学生は多忙です。卒論の執筆、最後の学生生活の思い出作り(卒業旅行)、引越しの準備……。ここに「重たい課題」を課すのはNGです。
最適解は、「隙間時間(移動時間や待ち時間)にスマホで完結するマイクロラーニング」です。
- 動画の長さ:1本3分〜5分以内。
- デバイス:完全スマホ対応(PCを開く必要がない)。
- 内容:「読む」のではなく「見る・聞く」コンテンツ。
「バイトの休憩中に1本動画を見た」「電車の中で同期の投稿にコメントした」これくらいの軽さが、学生の生活に入り込むポイントです。企業との接点頻度(ザイオンス効果)を高めるには、「重く、たまに」よりも「軽く、毎日」の接触が有効です。
5.労働法上の注意点:内定者研修は「労働」か?
人事担当者が最も気にするのが、「内定者研修に給与を支払う必要があるか?」という法的リスクです。
原則:強制なら「労働」、任意なら「学習」
- 強制参加(義務):日時を指定して拘束したり、課題提出を必須として「出さないと内定取り消し」を示唆したりする場合は、「指揮命令下」にあるとみなされ、賃金(給与)の支払い義務が発生します。
- 任意参加(推奨):「eラーニングのアカウントを渡すので、好きな時に見てね(見なくてもペナルティはないよ)」というスタンスであれば、基本的には自己啓発とみなされ、給与は不要です。
企業の対応策
多くの企業では、「eラーニングは任意(自己啓発)」としつつ、「入社時に役立つから見ておくと得だよ」と動機づけを行っています。または、あえて「入社前アルバイト」として雇用契約を結び、給与を払ってガッツリ研修を行う企業もあります。中途半端に「必須っぽい雰囲気だけど無給」にするのが、後々トラブルになる一番のリスクです。
6.よくある失敗例と対策(FAQ)
- Q1.eラーニングを導入したが、ログイン率が低い。
- A.「見なさい」と投げるだけでは見ません。
- ゲーミフィケーション:
「動画を見たらポイントが貯まり、入社式で景品と交換」などのゲーム要素を入れる。 - 人事からのフィードバック:
自己紹介を投稿したら、必ず人事担当者が「いいね」やコメントを返す。 - 目的の提示:
「この動画を見ておくと、入社後のExcel研修が免除になるよ」といった実利を示す。
- ゲーミフィケーション:
- A.「見なさい」と投げるだけでは見ません。
- Q2.内定辞退者が出た場合、アカウントはどうする?
- A.辞退の連絡が来たら、速やかにアカウントを停止(無効化)してください。LMSで管理していれば、ボタン一つで停止でき、社外秘情報の流出を防げます。メールでPDFを送付していると、回収不能になるリスクがあります。
- A.辞退の連絡が来たら、速やかにアカウントを停止(無効化)してください。LMSで管理していれば、ボタン一つで停止でき、社外秘情報の流出を防げます。メールでPDFを送付していると、回収不能になるリスクがあります。
- Q3.内定者同士のトラブル(SNSでの炎上など)が怖い。
- A.オープンなSNS(LINEグループなど)でやり取りさせると、企業側が管理できず、トラブルやネガティブな噂が拡散する温床になります。企業管理下の「LMS内の掲示板」を使わせることで、人事の目が届く範囲で健全な交流を促せます。
7.LMSが「入社前」と「入社後」をシームレスにつなぐ
内定者研修をLMSで行う最大のメリットは、「データが引き継がれること」です。
内定期間中にLMSで学んだ履歴や、人事とのやり取り、同期との交流ログ。これらは入社後もそのまま残ります。4月1日、新入社員研修が始まった時、彼らは「使い慣れたLMS」を開けばよく、これまでの学習の続きからスムーズにスタートできます。
「入社前はAツール、入社後はBシステム」と分断されると、また一から使い方を覚えなければならず、ストレスになります。「内定時代から始まる、一貫したタレントマネジメント」を実現するには、LMSの早期導入が不可欠です。
クオークでは以下のようなご支援が可能です。
- 内定者専用パッケージ:「ビジネスマナー入門」「Excel基礎」「社会人の心構え」など、内定者に最適なマイクロコンテンツ群。
- スマホ特化LMS:Z世代が直感的に使えるUIと、SNSのようなコミュニケーション機能。
- 運用代行:忙しい人事に代わり、内定者へのログイン勧奨メール配信や進捗レポート作成。
「内定辞退を減らしたい」「入社までの期間を有意義に使わせたい」とお考えのご担当者様は、ぜひご相談ください。
8.まとめ
- 内定者研修とは、入社前の不安を解消し、辞退防止と早期戦力化を図る「プレ・オンボーディング」。
- 学生生活を邪魔しない「スマホ×マイクロラーニング」での提供が、Z世代には最適。
- 強制参加にする場合は給与が必要。LMSを活用して「任意だがやりたくなる」仕掛けを作ることが成功の鍵。
▼次のアクション「内定者フォローにLMSを活用したい」「スマホで学べる内定者向け教材を探している」とお考えのご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
9.関連用語
- [オンボーディング]
- [マイクロラーニング]
- [新入社員研修]
- [エンゲージメント]



